8772「異例づくし」

2022 . 12 . 1

8772

 

2022年11月26日付の「日経新聞」朝刊の最終面(文化欄)で、岩本文枝記者が、

「鴻池朋子さん」

という美術家の展覧会の様子を大きく取り上げていました。

その見出しに、

「他人の作品や『糞』…異例づくし」

と大きく出ていました。本文を読んでも同じように、

「異例づくしの展覧会で」

とありました。しかし、普通はこれ、

「異例ずくめ」

を使うのではないでしょうか?

あ、そうか、

*「ずくめ」=結果としてそうなった状態

*「づくし」=意図してそういう状態にした

という違いなのかな?この展覧会は「意図して」、意表を突くような作品ばかりを並べたと。

『三省堂国語辞典・第八版』を引くと、

*「ずくめ」

(1)そればかりでかためること。(例)規則ずくめ(2)そのものばかりを使うこと(例)黒ずくめの服装【由来】「すく(竦)める」(=もと、同類の多くのものでおおったりして、身動きできなくする)の連用形から。(表記)「尽っく」と関連させて「尽くめ」とも書かれてきた。

*「づくし(尽くし)」

同類のものを、ある限りならべること。(例)魚(うお)づくし、橋づくし

 

そうだったのか!

両方「尽くし」「尽くめ」と書くのに、「づ」「ず」の表記が違うのは、なぜだろう?とずっと思ってきましたが、そもそも「ずくめ」は「竦(すく)める」の連用形で、「ず」は「すくめ」の「す」が、

「竦(ずく)め」

と「連濁」しているんですね!謎が解けました!

しかし、「づくし(尽くし)」が「同類のものを、ある限りならべること」であるのならば、この展覧会の、

「異例づくし」

って少しおかしくないですか?「異例」とは「同類ではない」ということですよね。そればかり集めたら、

「異例という同類項」

で結んでしまうことになりませんか?その時点でその「異例」は、

「異例ではなくなる」

のではないか?とふと思ったのですが。このばあいの「異例」は、

「決して『唯一無二』ではない」

ということなんですかねえ?

 

 

(2022、12、1)