10月29日の夜に韓国・ソウルの繁華街である梨泰院(イテウォン)で起きた大規模な転倒事故。156人もの方が命を落としました。その中には日本の若い方も2人、含まれています。謹んで哀悼の意を表します。
2001年7月に兵庫県明石市の花火大会の歩道橋で起きた事故のときに書いて(「平成ことば事情380将棋倒し」)、それ以来「21年ぶり」に、このことについて書くことになりました。この現象に関して、以前は、
「将棋倒し」
とか、
「ドミノ倒し」
と呼ばれることが多かったのですが、「将棋連盟」から、
「『将棋倒し』という表現は使ってほしくない」
という申し入れがあったことなどから徐々に使われなくなり、明石の歩道橋事故のあとから、学術的・専門的な表現の、
「群衆雪崩」「群集雪崩」
が使われるようになりました。しかし一般的には、まだ「将棋倒し」のほうが、
「通りがいい」
のかもしれません。
「ミヤネ屋」では、10月31日の放送では「ドミノ倒し」を使いました。
10月31日の「読売新聞」では、「将棋倒し」を使っていました。10月29日の夜遅く(=午後11時前)の事故で、翌30日(=日曜日)の朝刊には間に合わず、日曜日は夕刊がないので、結局31日(月曜日)の朝刊の記事になったのです。
各紙の朝刊・夕刊の「事故」の表現は、以下の通りです。
<朝刊>
(読売)群衆が将棋倒しになった事故
(朝日)大勢の人が折り重なるように倒れる事故
(毎日)多くの人が折り重なるように転倒する事故
(産経)大勢の人が折り重なるように転倒する事故
(日経)若者らが狭い路地で転倒する事故(次々と折り重なるように転倒)
<夕刊>
(読売)折り重なるように倒れて死傷した事故
(朝日)150人以上が亡くなった雑踏事故
(毎日)雑踏事故
(産経)群集(※)が折り重なるように転倒し、150人以上が死亡したソウル・梨泰院の雑踏事故 (※)これは「群衆」じゃないのかな?
(日経)雑踏事故
でした。
ということで、朝刊段階では、
「折り重なるように倒れて(転倒して)」
という表現が多く、夕刊の段階では、もう簡潔に、
「雑踏事故」
と呼ばれているようです。
「読売新聞」が「将棋倒し」を使ったのは、そのときだけでした。



(追記)
「10月29日の夜遅く(=午後11時前)の事故で、翌30日(=日曜日)の朝刊には間に合わず、日曜日は夕刊がないので、結局31日(月曜日)の朝刊の記事になったのです。」
と書いた部分に関して、読売新聞関係の方から、
「いや、30日の朝刊の14版に『読売新聞』だけ間に合って1面トップに載っている」
とご指摘を頂きました。10月30日(日)の『読売新聞』朝刊(14版)を確認したら、たしかに「1面トップ」にしっかり載っていました。他紙は確認していませんが30日の朝刊に載ったのは「読売だけ」だったそうです。
どういうことかと言うと、私が見たのは、
「自宅で取っている13版」
だったのです。
新聞の朝刊には、締め切りが早い「13版」と、一番締め切りが遅い「14版」があり、当然、締め切りが遅い方が「新しいニュース」を載せられます。それは印刷所からの距離や配達のコースなどによって異なっていますが、おおむね、
「都市部は14版、周辺部は13版」
です。大阪で印刷してそれから配達に向かう四国のほうなどは「12版」があったと思いす。つまり、今回の事故の記事は、
「14版には載せることができたが、13版には載せられなかった」
ということです。そういう時間帯に起きてしまったのですね。
私はことあるごとに、
「14版を配達してほしい。そのように読者が言っていると、本社の方に伝えてほしい」
と販売所に要求していますが、販売所の人は申し訳なさそうに、
「それは無理なんですう…」
と答えます。まあ、販売所の人に言っても仕方がないのですが。でも、「同じ料金」を払っているんですから「新しいニュース」を読みたいと思うのは、当然の権利ですよね。
ということで、この項目で私が書きたかったことの本筋からはそれましたが、
「10月30日『読売新聞』朝刊の『14版』だけ、この事故の記事が1面トップに載っている」
ということは、しっかりお伝えしておきます。
(2022、11、15)