8747「『群衆雪崩』か『群集雪崩』か」

2022 . 11 . 8

8747

 

10月29日の夜に韓国・ソウルの繁華街である梨泰院(イテウォン)で起きた大規模な転倒事故。156人もの方が命を落としました。その中には日本の若い方も2人、含まれています。謹んで哀悼の意を表します。

その現象に関して、以前は「将棋倒し」とか「ドミノ倒し」と呼ばれることが多かったのですが、学術的・専門的には、

「群衆雪崩」「群集雪崩」

と呼ばれます。これは2001年に兵庫県明石市の花火大会の歩道橋で起きた事故の頃から、そういう言い方が広がったと思います。

ところで、この「ぐんしゅう」の「しゅう」に漢字は「衆」か?「集」か?

テレビ・新聞の状況をチェックしてみました。

10月30日の段階でのネット記事では、

*「群衆雪崩」=朝日新聞・日経新聞・スポニチ・テレ朝(ネット記事)

*「群集雪崩」=産経新聞・日テレ・NHK・テレ朝(放送)

*「群衆事故」=毎日新聞・スポニチ

*「群衆が波打つ状態」=読売新聞

※「朝日新聞」は「群衆雪崩」と「群集安全学」と「群衆」「群集」を使い分け。

10月31日の朝刊各紙は、

(読売)群集雪崩

(朝日)群衆雪崩

(毎日)群衆雪崩

(産経)群衆前進

(日経)群衆雪崩

でした。

10月31日の「ミヤネ屋」では、関西大学の川口教授のHPに合わせて、

「群集雪崩」

で放送しました。この日の日本テレビ「スッキリ」も「群集雪崩」だったのでそれに従いました。(読売新聞も「群集雪崩」でしたし。)

しかし日本テレビは、夕方の「news every.」で関西大学・川口先生のインタビューにかぶせるテロップで、

「群衆雪崩」

と「衆」を使っていました。また、その日の夜の「news zero」も「群衆雪崩」だったので、翌日(11月1日)以降は、

「群衆」

なのかなあ、と思っていたら、やはり翌日に、

「系列は『群衆雪崩』で統一します」

という連絡が来ました。

私が見た中では、TBS系列がその後も、

「群集雪崩」

と「集」を使い、NHKも、

「群集なだれ」

と「集」で「なだれ」が平仮名だったほかは、

「群衆雪崩」

で「衆」だったようです。

ちなみに『新聞用語集2022年版』で「群集」と「群衆」の使い分けは、

*「群集」=(人・物が集まる)群集心理、群集墳、やじ馬が群集する

*「群衆」=(人の群れ)群衆を扇動する、大群衆

(「やじ馬」、使っていいのかな?)つまり、

*「群集」=動作

*「群衆」=集まった人

という使い分けなんですが、「ぐんしゅう雪崩」の場合は、

*「群集したことで起きた雪崩のような現象」=群集雪崩

*「群衆が雪崩のように崩れる現象」=群衆雪崩

と、両方考えられると思うんですね。だって、

「群衆」=「群集した人」

なんですから。これは使い分けが難しいなあ。

 

(2022、11、8)