10月29日の夜に韓国・ソウルの繁華街である梨泰院(イテウォン)で起きた大規模な転倒事故。156人もの方が命を落としました。その中には日本の若い方も2人、含まれています。謹んで哀悼の意を表します。
その現象に関して、以前は「将棋倒し」とか「ドミノ倒し」と呼ばれることが多かったのですが、学術的・専門的には、
「群衆雪崩」「群集雪崩」
と呼ばれます。これは2001年に兵庫県明石市の花火大会の歩道橋で起きた事故の頃から、そういう言い方が広がったと思います。
ところで、この「ぐんしゅう」の「しゅう」に漢字は「衆」か?「集」か?
テレビ・新聞の状況をチェックしてみました。
10月30日の段階でのネット記事では、
*「群衆雪崩」=朝日新聞・日経新聞・スポニチ・テレ朝(ネット記事)
*「群集雪崩」=産経新聞・日テレ・NHK・テレ朝(放送)
*「群衆事故」=毎日新聞・スポニチ
*「群衆が波打つ状態」=読売新聞
※「朝日新聞」は「群衆雪崩」と「群集安全学」と「群衆」「群集」を使い分け。
10月31日の朝刊各紙は、
(読売)群集雪崩
(朝日)群衆雪崩
(毎日)群衆雪崩
(産経)群衆前進
(日経)群衆雪崩
でした。
10月31日の「ミヤネ屋」では、関西大学の川口教授のHPに合わせて、
「群集雪崩」
で放送しました。この日の日本テレビ「スッキリ」も「群集雪崩」だったのでそれに従いました。(読売新聞も「群集雪崩」でしたし。)
しかし日本テレビは、夕方の「news every.」で関西大学・川口先生のインタビューにかぶせるテロップで、
「群衆雪崩」
と「衆」を使っていました。また、その日の夜の「news zero」も「群衆雪崩」だったので、翌日(11月1日)以降は、
「群衆」
なのかなあ、と思っていたら、やはり翌日に、
「系列は『群衆雪崩』で統一します」
という連絡が来ました。
私が見た中では、TBS系列がその後も、
「群集雪崩」
と「集」を使い、NHKも、
「群集なだれ」
と「集」で「なだれ」が平仮名だったほかは、
「群衆雪崩」
で「衆」だったようです。
ちなみに『新聞用語集2022年版』で「群集」と「群衆」の使い分けは、
*「群集」=(人・物が集まる)群集心理、群集墳、やじ馬が群集する
*「群衆」=(人の群れ)群衆を扇動する、大群衆
(「やじ馬」、使っていいのかな?)つまり、
*「群集」=動作
*「群衆」=集まった人
という使い分けなんですが、「ぐんしゅう雪崩」の場合は、
*「群集したことで起きた雪崩のような現象」=群集雪崩
*「群衆が雪崩のように崩れる現象」=群衆雪崩
と、両方考えられると思うんですね。だって、
「群衆」=「群集した人」
なんですから。これは使い分けが難しいなあ。


