安倍元・首相、エリザベス女王と相次いで亡くなって「国葬」も行われ、その報道の中でよく出て来た言葉に、
「棺」
がありました。この「棺」という漢字は「常用漢字」なのですが、常用漢字表に載っている読み方は、
「カン」
という「音読み」しかありません。つまり、「訓読み」で「ひつぎ」と読むには、
「ルビを振って『棺(ひつぎ)』」
とするか、
「平仮名で『ひつぎ』」
と書くしかないのです。
もちろん「カタカナ」でも「ローマ字」でも書けますが、普通は書かないですよね。
新聞各紙はどうしているか?9月14日の夕刊は、
・「棺」=朝日
・「ひつぎ」=読売・毎日・産経・日経
でした。
テレビでは、私が確認した中では、
・「棺」=日本テレビ・テレビ朝日
・「ひつぎ」=NHK
でした。
「ひつぎ」と平仮名で書くと、
「ひつじ」
に見えてしまいそうではあります。
それにしても「漢字」を好んで書くことの多い「産経新聞」が、なぜ「棺」と漢字で書かないのか?もしかしたら、「棺」ではなく、本当は、
「柩(ひつぎ)」
と書きたいのではないでしょうか?
実は、「棺」と「柩」の違いに関して、
・「棺」=入れ物のみ
・「柩」=ご遺体が入った棺
という使い分けがあるというのを読んだことがあります。(本当かな?)たしかに、
「霊柩車」
では「柩」が使われていますね。それに関連して、
「ひつぎをのせた車」
という場合の、
「のせた」
というのは、
「乗せた」か?「載せた」か?
というのも気になっていました。「ひつぎ」は「物」ですから、そう考えると、
「載せた」
になりますが、ご遺体とはいえ「人」が入っている「ひつぎ」と考えると、
「乗せた」
になります。多くのメディアは、「ひつぎ」「棺(ひつぎ)」どちらでも、
「乗せた」
を使っていました。「ご遺体」を「物」ととらえるのは、ためらわれたのでしょう。
そう考えると、もし「漢字を使う」のならば、
「柩(ひつぎ)を乗せた車」
とするのが一番で、「(棺の)漢字を使わない」のならば、
「ひつぎを乗せた車」
になるということでしょうかねえ。
なお『週刊文春』(2022年10月6日号)の林真理子さんのコラム『夜ふけのなわとび』(第1763回)の「戴冠式で」で、エリザベス女王の国葬を取り上げていましたが、そこで林さんは、ルビなしで、
「棺」
を使っていました。


