8661「無言のざわめき」

2022 . 9 . 5

8661

 

9月1日の日本テレビ「スッキリ」で、福岡の5歳児餓死事件の裁判を取り上げ、碇利恵被告の「ママ友」の「赤堀恵美子被告」の発言に関して、裁判を傍聴したリポーターが、自らのメモを基に報告していました。

それによると、きのう(8月31日)の裁判のポイントは、

「碇被告が恐れていた、暴力団とつながりのあるボス(女性)」

に関して、赤堀被告が、

「ボスは、碇被告が思いを寄せている男」

と証言したところだそうです。

え?男???

ということで、リポーターによると法廷には、

「無言のざわめき」

が起きたというのです。

言いたいことは分かりますが、私はそれを聞いて、

「ざわめきが“無言”?」

と引っかかりました。さらに検察側が、

「LINEでは、ボスのことを『彼女』と書いているではないか」

と問い詰めると、赤堀被告は、

「でもボスは『男』。LINEは碇被告から『女の名前にして』と言われた」

と答える。うーん、普通はこんなに話が変わっては、信用できませんよね。

さらに赤堀被告が、

「碇被告が、翔士郎ちゃんに暴力を振るっているのを見た」

と言った時に、傍聴席からまた、

「無言のざわめき」

が起こったとのこと。

法廷では、傍聴者は発言を認められていないので、「無言」でしょうね。

でも、「舞台」(演劇)の背景の人々のように、声には出さないけれども、

「話しているような動作」

をしていたら、これは、

「無言のざわめき」

になるのかもしれません。しかし、それはそういった「比喩的な表現」ではなく、

「具体的に表現するべき」

なのではないでしょうか。「無言のざわめき」という表現は「非常に主観的」で、

「実際にはどのような状態であったかが、よくわからない」

のです。似た言葉には、

静かなブーム」

というのがありました。「静か」だったら「ブームではない」のではないか。

「無言」だったら「『ざわめき』ではない」のではないか。

昔、ラジオ中継を聞きながら甲子園で高校野球の取材をしていた際に、2塁打を打った選手のことを、ラジオの実況アナウンサーが、

「ガッツポーズ!」

と言ったのですが、実際に見た選手は、

「ガッツポーズをしていなかった」

ということがありました。そのアナウンサーに直接、その理由を聞くことはできませんでしたが、恐らく彼は、

「心象風景の実況」

をしていたのでしょう。「スポーツ」、しかも「ラジオ」ならば、そういった「創作」は許されるのですね。でもテレビで、「法廷」に関する表現には「心象風景の実況」を持ち込んでは、いけないんじゃないかなと思いました。

 

(2022、9、1)