7月12日、前の週の金曜日(8日)に亡くなった安倍晋三・元首相の葬儀が、東京・港区の増上寺(浄土宗)で営まれました。
その際に、安倍元首相の遺体を納めた棺をのせた車のことを、
「霊柩(れいきゅう)車」
と呼んでいいか?と、中継のリポーターさんから質問がありました。
「霊柩車」と聞くと、私などの年代が思い浮かべるのは、
「神社かお寺の本殿の屋根のような建築物を載せた車」
ですが、最近は、とんとお目にかからなくなっています。
今回、安倍元首相の棺をのせた車も、「本殿の屋根」はなく、
「黒塗りのリムジンのような長い車」
でしたので、「霊柩車」と呼ぶのは、ためらわれました。そこで、
「『安倍元首相の棺(ご遺体)をのせた車』でいいんじゃない?」
と答え、そのように放送されました。
翌日、7月13日の朝刊各紙を見たところ、
(読売新聞)(1面)ひつぎを乗せた車列
(社会面)ひつぎを乗せた霊きゅう車
(朝日新聞)(社会面)棺を乗せた車
(社会面キャプション)棺(ひつぎ)を乗せた車
(オンライン)棺を乗せた霊柩(きゅう)車
(毎日新聞)(1面)ひつぎを乗せた車
(社会面キャプション)ひつぎを乗せた霊きゅう車
(産経新聞)(1面キャプション)ひつぎを乗せた車
(社会面)ひつぎを乗せた車
(社会面キャプション)増上寺を出る霊柩車
(日経新聞)(1面)ひつぎを乗せた車
(1面キャプション)ひつぎを乗せた車
(社会面)ひつぎを乗せた車
(社会面キャプション)ひつぎを乗せた車
ということで、「霊きゅう車」「霊柩車」「霊柩(きゅう)車」を使っていたのは、
(読売新聞)社会面「霊きゅう車」
(朝日新聞)オンライン記事「霊柩(きゅう)車」
(毎日新聞)社会面キャプション「霊きゅう車」
(産経新聞)社会面キャプション「霊柩車」
でした。「1面」では使わないのかな?
朝日新聞は「1面」にこの記事自体が載っていませんでしたが、「1面」では残りの各紙は、「霊柩車」は使わずに、
「(ひつぎを乗せた)車」
でした。
ちなみに「柩」という漢字は「常用漢字ではない」ので使わずに、
「霊きゅう車」
と書くのが基本(読売新聞・毎日新聞)なのですが、漢字に平仮名が交じるのを嫌って、振り仮名(ルビ)を付けて、
「霊柩(きゅう)車」
とすることも(朝日新聞)あります。また、その新聞社独自に「振り仮名なしでも使って良い」と決めていることもあって、そういう場合は、
「霊柩車」
とするのでしょうね。「産経新聞」のように。でも、記事本文では使わないで「写真のキャプション」だけで使っているので、「例外的措置」かもしれません。
ついでに言うと、
「棺」
という漢字は「常用漢字」なのですが、「常用漢字表」には、
「カン」
という「音読み」しか載っていなくて、
「ひつぎ」
という「訓読み」は載っていません。これは、
「表外訓」
と呼ばれて、普通は「ひつぎ」と「平仮名」で書くのです。もし「漢字」を使う場合は、振り仮名を振って、
「棺(ひつぎ)」
としますが、新聞社によっては「ルビなし」での使用を認めている社もあります。
「朝日新聞」が、「棺」にルビを振らずに「漢字」を使っているのは、そういうことなのかもしれませんね。話がそれてしまいましたが。


