8574「霊柩車」

2022 . 7 . 14

8574

 

 

7月12日、前の週の金曜日(8日)に亡くなった安倍晋三・元首相の葬儀が、東京・港区の増上寺(浄土宗)で営まれました。

その際に、安倍元首相の遺体を納めた棺をのせた車のことを、

「霊柩(れいきゅう)車」

と呼んでいいか?と、中継のリポーターさんから質問がありました。

「霊柩車」と聞くと、私などの年代が思い浮かべるのは、

「神社かお寺の本殿の屋根のような建築物を載せた車」

ですが、最近は、とんとお目にかからなくなっています。

今回、安倍元首相の棺をのせた車も、「本殿の屋根」はなく、

「黒塗りのリムジンのような長い車」

でしたので、「霊柩車」と呼ぶのは、ためらわれました。そこで、

「『安倍元首相の棺(ご遺体)をのせた車』でいいんじゃない?」

と答え、そのように放送されました。

翌日、7月13日の朝刊各紙を見たところ、

(読売新聞)(1面)ひつぎを乗せた車列

(社会面)ひつぎを乗せた霊きゅう車

(朝日新聞)(社会面)棺を乗せた車

(社会面キャプション)棺(ひつぎ)を乗せた車

(オンライン)棺を乗せた霊柩(きゅう)車

(毎日新聞)(1面)ひつぎを乗せた車

(社会面キャプション)ひつぎを乗せた霊きゅう車

(産経新聞)(1面キャプション)ひつぎを乗せた車

(社会面)ひつぎを乗せた車

(社会面キャプション)増上寺を出る霊柩車

(日経新聞)(1面)ひつぎを乗せた車

(1面キャプション)ひつぎを乗せた車

(社会面)ひつぎを乗せた車

(社会面キャプション)ひつぎを乗せた車

 

ということで、「霊きゅう車」「霊柩車」「霊柩(きゅう)車」を使っていたのは、

(読売新聞)社会面「霊きゅう車」

(朝日新聞)オンライン記事「霊柩(きゅう)車」

(毎日新聞)社会面キャプション「霊きゅう車」

(産経新聞)社会面キャプション「霊柩車」

でした。「1面」では使わないのかな?

朝日新聞は「1面」にこの記事自体が載っていませんでしたが、「1面」では残りの各紙は、「霊柩車」は使わずに、

「(ひつぎを乗せた)車」

でした。

ちなみに「柩」という漢字は「常用漢字ではない」ので使わずに、

「霊きゅう車」

と書くのが基本(読売新聞・毎日新聞)なのですが、漢字に平仮名が交じるのを嫌って、振り仮名(ルビ)を付けて、

「霊柩(きゅう)車」

とすることも(朝日新聞)あります。また、その新聞社独自に「振り仮名なしでも使って良い」と決めていることもあって、そういう場合は、

「霊柩車」

とするのでしょうね。「産経新聞」のように。でも、記事本文では使わないで「写真のキャプション」だけで使っているので、「例外的措置」かもしれません。

ついでに言うと、

「棺」

という漢字は「常用漢字」なのですが、「常用漢字表」には、

「カン」

という「音読み」しか載っていなくて、

「ひつぎ」

という「訓読み」は載っていません。これは、

「表外訓」

と呼ばれて、普通は「ひつぎ」と「平仮名」で書くのです。もし「漢字」を使う場合は、振り仮名を振って、

「棺(ひつぎ)」

としますが、新聞社によっては「ルビなし」での使用を認めている社もあります。

「朝日新聞」が、「棺」にルビを振らずに「漢字」を使っているのは、そういうことなのかもしれませんね。話がそれてしまいましたが。

 

(2022、7、13)