8579「印鑑とハンコ」

2022 . 7 . 15

8579

 

旧統一教会が、かつて「霊感商法」で、

「壺や印鑑を販売していた」

と放送したところ、視聴者の方から、

「あれは『印鑑』ではない、『ハンコ』だ」

というご指摘を頂きました。

「印鑑」

というのは「ハンコ」によって押された、

「印影・印章」

のことをいうのだと言うのです。

たしかに「印鑑」を辞書で引くと、最初に出てくる意味は「印章」、つまり、

「押されたもの」

です。しかし2番目以降の意味として、

「ハンコとも」

と出てきます。つまり「押すほうの物」ですね。

私の言葉の感覚では、「印鑑」を「話し言葉・俗語」で言うと「ハンコ」ですね。「ハンコ」の「コ」を取れば、

「判」「版」

で、例えば「版画」は、

「版に彫った絵を写したもの」

ですから、その意味で言うと「印鑑(印章)」も、

「判に彫った字を写したもの」

で、あの象牙やら木やらプラスチックやらで出来ている小さな円柱は「印鑑」ではなく、

「判(こ)」

と呼ぶのが正しいでしょう。しかしこれは、

「鍵と錠」

の関係に似ています。

「鍵をかける」

と言うと、

「あれは『鍵をかける』のではない、『錠をかける』のだ」

と言う方がいらっしゃいます。「鍵と錠」はある意味「一体」となっている感じがします。

「印鑑と判」

も、そのような関係なのではないでしょうか?

たとえば、市役所で、

「印鑑をご持参ください」

と言われて、

「(判で押した)印章の写った紙」

を持って行く人は恐らくいなくて、みんな、象牙や木やプラスチックで出来た小さな円柱の「判(ハンコ)」を持って行きますよね。これは、

「印鑑=判」

と認識されているからではないでしょうか?

『三省堂国語辞典・第八版』には、

*「いんかん(印鑑)」=(1)(自分のものとして)あらかじめ役所・銀行などに届け出た、特定の印影。(例)印鑑登録・印鑑証明(2)印影をおす道具。はんこ。(例)印鑑を押す。

*「はんこ(判子・ハンコ)=(1)紙におしつけて、名前の文字などしるす道具。(例)承諾の判子を押す・判子をつく・日付の判子(2)「はんこ(1)をおすこと」。押印。なつ(捺)印。(例)判子(を)お願いします。(3)「はんこ(1)を押したあとのしるし。印影。(例)上司の判子をもらう(文書に押してもらう)▽「判」(なまって「はんこう」とも)

とありました。

つまり、そういうことですね。

 

(2022、7、14)