旧統一教会が、かつて「霊感商法」で、
「壺や印鑑を販売していた」
と放送したところ、視聴者の方から、
「あれは『印鑑』ではない、『ハンコ』だ」
というご指摘を頂きました。
「印鑑」
というのは「ハンコ」によって押された、
「印影・印章」
のことをいうのだと言うのです。
たしかに「印鑑」を辞書で引くと、最初に出てくる意味は「印章」、つまり、
「押されたもの」
です。しかし2番目以降の意味として、
「ハンコとも」
と出てきます。つまり「押すほうの物」ですね。
私の言葉の感覚では、「印鑑」を「話し言葉・俗語」で言うと「ハンコ」ですね。「ハンコ」の「コ」を取れば、
「判」「版」
で、例えば「版画」は、
「版に彫った絵を写したもの」
ですから、その意味で言うと「印鑑(印章)」も、
「判に彫った字を写したもの」
で、あの象牙やら木やらプラスチックやらで出来ている小さな円柱は「印鑑」ではなく、
「判(こ)」
と呼ぶのが正しいでしょう。しかしこれは、
「鍵と錠」
の関係に似ています。
「鍵をかける」
と言うと、
「あれは『鍵をかける』のではない、『錠をかける』のだ」
と言う方がいらっしゃいます。「鍵と錠」はある意味「一体」となっている感じがします。
「印鑑と判」
も、そのような関係なのではないでしょうか?
たとえば、市役所で、
「印鑑をご持参ください」
と言われて、
「(判で押した)印章の写った紙」
を持って行く人は恐らくいなくて、みんな、象牙や木やプラスチックで出来た小さな円柱の「判(ハンコ)」を持って行きますよね。これは、
「印鑑=判」
と認識されているからではないでしょうか?
『三省堂国語辞典・第八版』には、
*「いんかん(印鑑)」=(1)(自分のものとして)あらかじめ役所・銀行などに届け出た、特定の印影。(例)印鑑登録・印鑑証明(2)印影をおす道具。はんこ。(例)印鑑を押す。
*「はんこ(判子・ハンコ)=(1)紙におしつけて、名前の文字などしるす道具。(例)承諾の判子を押す・判子をつく・日付の判子(2)「はんこ(1)をおすこと」。押印。なつ(捺)印。(例)判子(を)お願いします。(3)「はんこ(1)を押したあとのしるし。印影。(例)上司の判子をもらう(文書に押してもらう)▽「判」(なまって「はんこう」とも)
とありました。
つまり、そういうことですね。


