安倍元・首相が亡くなった後の「ミヤネ屋」で、宮根さんが、
「野党と舌戦を繰り広げて」
と言っていたのに違和感がありました。これは、
「野党と論戦を繰り広げて」
なのではないでしょうか?
「舌戦」と「論戦」の違いは?『広辞苑』を引くと、
・「舌戦」=言いあらそうこと口論。くちいさかい。(例)舌戦を戦わす。
・「論戦」=互いに議論をたたかわすこと。(例)論戦を繰り広げる。
あら。意味から言うと「党首討論」は「論戦」だと思いますが、でも「舌戦を戦わす」という用例もあるなあ。
「三省堂国語辞典」を引くと、
・「舌戦」=(選挙や演説会のさいに)弁論で争うこと。(⇔筆戦)
・「論戦」=議論をたたわせること。(例)活発な論戦を展開する。
これも両方、「国会での与野党」に使えそうです。
「明鏡国語辞典」を引くと、
・「舌戦」=ことばで争うこと。口論。論戦。(例)舌戦を交える。
・「論戦」=互いに議論をたたかわせること。(例)「政策について論戦する」「討論会で論戦を交える」「与野党が激しい論戦を繰り広げる」
これは用例を見ると、やや「論戦」に分があるな。
「新明解国語辞典」を引いてみると、
・「舌戦」=相手の主張に負けまいとして、口頭でやる返すこと⇔筆戦
・「論戦」=考えの対立するものがそれぞれ自分の意見を述べ、はなばなしくやりとりすること。(例)「論戦を展開する」「論戦をいどむ」
うーむ、これを見ると、「舌戦」は、昔は「口頭で」というところに重きが置かれていて、同じようなもので「文書」でのやり合いは「筆戦」と言ったのではないでしょうか。「対語」があるということは、
「両方、同じようにあった」
ということですよね。しかし最近は「筆戦」という言葉はあまり聞かなくなって(SNSでの“舌戦”や“論戦”を“筆戦”とは言わないですね)、その影響でか、本来「論戦」の意味合いのものも「舌戦」と呼ぶような傾向が出て来ているのではないですかねえ。
そんな気がしました。


