「牧場の朝」
という曲を聞いていたら、歌詞の中に、
「ポプラ並木のうっすりと」
という言葉が出て来ました。この、
「うっすりと」
は、初めて見る言葉です。これは、
「うっすらと」
ではないのか?と思って『広辞苑』を引くと、なんと、
・「うっすり(薄り)」=「うっすら」に同じ。
と、「空(カラ)見出し」的に載っていました。
『精選版日本国語大辞典』を引くと、
・「うっすり(薄)」(「と」を伴う場合が多い)→うっすら
と「空見出し」ながらも、「用例」が載っていました。
*俳諧・深川(1693)「うっすりと門の瓦に雪降りて<許六>」
『三省堂国語辞典・第八版』も載せていました。
・「うっすり」=うっすら。(例)「霧の中にうっすりと並木が見える」
でも・・・もう「死語」だよなあ。
この「牧場の朝」は「1932年12月」の「新訂尋常小学唱歌」に初めて載ったもので、「作詞者」は
「杉村楚人冠(そじんかん)」
という人。名前は「うっすりと」聞いたことがあるけど、どんな人か知らないので調べたら、
「杉村楚人冠(1872-1945)」=和歌山市生まれ。新聞記者、随筆家、俳人。
とありました。1903年朝日新聞入社。日露戦争後に特派員としてイギリスに向かい、帰国後、1911年に外国の新聞社にあった「索引部」(のちの調査部)や、1924年には「記事審査部」を日本で初めて作ったそうです。新聞の「縮刷版」を考案したのも彼だそうで、1910年に母校・中央大学に「新聞研究家」が設置されたのも、彼の発案だそうです。つまり「メディア研究」の第一人者だったわけですね。知りませんでした。
「うっすりと」
から、思わぬ方向に広がりましたが
「小舎小舎(こやごや)」
という「連濁」も気になったなあ。
(2022、6、20)


