時刻の言い方で、最近気になる物ことの一つに、
「9時半前」
という言い方があります。
「前」
は基本的に「正時」=9時ちょうど、10時ちょうど=長い針が「12」を指している時刻にだけ使えると思います。
「半」
の場合は、
「9時半ごろ」「9時半過ぎ」
ならOKですが、「前」はダメです。
その理由について考えてみました。
まず、基本的に時刻を示すのは「正時」(「8時」ちょうど、「9時」ちょうど、「10」
時ちょうど…)です。「分」は「1時間」という時間を「60分割」した「補助単位」だと考えられます。よって、「9:30」というのは、「9時30分過ぎ」と言うのが正しい。この場合の「30分」は「時刻」ではなく「時間」なのです。
そして、「時間」は、遡れません。「過ぎて行くもの」です。よって、「9時・30分過ぎ」の「過ぎ」は省略されて「9時30分」と言うようになったのではないでしょうか。つまり「9時30分過ぎ」は「9時33分」ではなく「9時30分」を指すのが本来なのでしょう。
それに対して、いまだ「正時」に届かない時刻を指して、「正時」を基準に「9時10分前」(8時50分)と言うようにもなってきました。この場合に「前」を省略しては「過ぎ」との区別ができなくなるので、必ず「前」を付けます。
そして、「30分」は「半時間」とも言うので、「9時30分(過ぎ)」を「9時半時間過ぎ」→「9時半(時間)過ぎ」ということも出て来ました。
その言い方が定着する中で、「9時10分」「9時30分」「9時半」などというのが、
「正時+過ぎた時間(=分)」
ではなく(意味的には同じ=同じ時刻を指すので)、
「細かい時刻」
を指すようになったことから、「正時」と同じように「細かい時刻」に「過ぎ」や「前」を付ける誤用が始まったのではないでしょうか。
ちなみに私は、今から半世紀前の「幼稚園児時代」に、
「『8:08』は『8時10分の前』なので『8時10分前』」
と言って、両親に注意され直された記憶があります。
ではなぜ「9時半過ぎ」は良くて、「9時半前」はダメなのでしょうか?
「9時半」は、元は、
「9時“半時間”過ぎ」
であり、それに「前」を付けると、
「9時“半時間”過ぎ・前」
となり、意味が成り立ちません。
それに対して「9時半過ぎ」は、
「『9時“半時間”過ぎ』過ぎ」
ではなく、元々の、
「9時半時間過ぎ」
の「時間」を省略しただけだと考えられるため、許容できるのではないでしょうか。
こんなことを考えてみました。


