歯医者さんで、
「口をゆすいでください」
と言われて口をゆすぎながら考えました。
「ゆすぐ」
という言葉と同じような意味で、似ている言葉に、
「すすぐ」
があります。さらに「すすぐ」に似た言葉には、
「そそぐ」
があります。これらの意味の違いは?
それぞれ、どのような場面で使うのか?というと、
「食器」をお湯で「ゆすぐ」。
「洗濯機」の「すすぎ」。
「汚名をそそ(雪)ぐ」の「そそぐ」=汚い物を流し落としてきれいになる。
その意味で「雪辱」=辱めをそそぐ。
「ゆすぐ」も「すすぐ」も意味は、
「液体で汚れを流し去ること」
ですね。「そそぐ」は「流し去るもの」が「汚名」「不名誉なこと」「恥」など「抽象的なこと」なので、それをきれいにするものも、物質である「液体」ではないですね。
あ、もしかしたら、「〇すぐ」というのが「きれいにする」という意味で、「ゆすぐ」の「ゆ」は、
「揺する」「揺り動かす」の「ゆ」
つまり、
「ゆすぐ」=液体でゆさぶってきれいにする
ではないか?そして、「すすぐ」の最初の「す」は、
「こする」=擦る・摺(す)る・擂(す)る
で、
「すすぐ」=「液体でこすってきれいにする」
なのではないか?
と、ここで『大辞林・第四版』を引っ張り出してきて、「ゆすぐ」を引いたら、漢字の違う「2種類のゆすぐ」が見出しになっていました。
*「ゆすぐ(漱ぐ)」=うがいをして口の中をきれいにする。すすぐ。(例)口をゆすぐ。
*「ゆすぐ(濯ぐ)」=ゆり動かしてよごれを洗う。すすぐ。(例)洗濯物をゆすぐ。
ビンゴ!当たりました!やっぱり「揺り動かして」ですね!
そして「すすぐ」は、
*「すすぐ(濯ぐ・雪ぐ)」=(古くは「すすく」と清音)(1)水で洗って汚れを落とす。洗剤などで洗った後、水で洗う。(例)「水をかえてすすぐ」「足をすすきて導かむと欲ふ(霊異記・下)」(2)汚名・恥などのつぐないをする。恨みをはらす。(例)「汚名をすすぐ」「爾(なんじ)が為に恨(うらみ)をすすがん(こがね丸・小波)」(3)けがれを清める。(例)この世の濁りをすすぎ給はざらむ(源氏物語・朝顔)」
こちらは「最初の『す』」は、「擦るの『す』」ではなかったようです。
でも「古くは『すすく』」と「清音」であったと書かれています。だとすると、
「す・すく」
で、ポイントは後ろの、
「すく」
のほうではないか。この「すく」は、
「透く」「漉く」「梳く」「鋤く」
等の意味にも共通して、
「きれいにする・ととのえる」
という意味ではないか?と考えましいた。これは、近いんじゃないかな?
そして「すすぐ」の【表記】としては「濯ぐ」「雪ぐ」「漱ぐ」の3つがあり、
*「濯ぐ」=“よごれを洗い落とす。ゆすぐ”の意。(例)「洗濯物を濯ぐ」
*「雪ぐ」=“不名誉を取り除く”の意。仮名で書くことも多い。(例)「汚名を雪ぐ」「恥を注ぐ」
*「漱ぐ」=“口の中を洗う・うがいをする”の意。仮名で書く事も多い(例)「口を漱ぐ」
とありました。
そして「すすぐ」と似た音の言葉には(最初に書いたように)、
「そそぐ」
がありますね。「すすぐ」ために「そそぐ」のかも。「さ行」の音は「液体」と関係があるのかな?
なお「精選版日本国語大辞典」を引いたら「すすぐ」の用例としてなんと、
「8世紀(720年)の『日本書紀』」
が出てきました!「ゆすぐ」の用例は「男重宝記」で、
「江戸時代・元禄6年(1693年)」
でした。


