8531「すすぐ・ゆすぐ・そそぐ」

2022 . 6 . 21

8531

 

歯医者さんで、

「口をゆすいでください」

と言われて口をゆすぎながら考えました。

「ゆすぐ」

という言葉と同じような意味で、似ている言葉に、

「すすぐ」

があります。さらに「すすぐ」に似た言葉には、

「そそぐ」

があります。これらの意味の違いは?

それぞれ、どのような場面で使うのか?というと、

「食器」をお湯で「ゆすぐ」。

「洗濯機」の「すすぎ」。

「汚名をそそ(雪)ぐ」の「そそぐ」=汚い物を流し落としてきれいになる。

その意味で「雪辱」=辱めをそそぐ。

「ゆすぐ」も「すすぐ」も意味は、

「液体で汚れを流し去ること」

ですね。「そそぐ」は「流し去るもの」が「汚名」「不名誉なこと」「恥」など「抽象的なこと」なので、それをきれいにするものも、物質である「液体」ではないですね。

あ、もしかしたら、「〇すぐ」というのが「きれいにする」という意味で、「ゆすぐ」の「ゆ」は、

「揺する」「揺り動かす」の「ゆ」

つまり、

「ゆすぐ」=液体でゆさぶってきれいにする

ではないか?そして、「すすぐ」の最初の「す」は、

「こする」=擦る・摺(す)る・擂(す)る

で、

「すすぐ」=「液体でこすってきれいにする」

なのではないか?

と、ここで『大辞林・第四版』を引っ張り出してきて、「ゆすぐ」を引いたら、漢字の違う「2種類のゆすぐ」が見出しになっていました。

*「ゆすぐ(漱ぐ)」=うがいをして口の中をきれいにする。すすぐ。(例)口をゆすぐ。

*「ゆすぐ(濯ぐ)」=ゆり動かしてよごれを洗う。すすぐ。(例)洗濯物をゆすぐ。

 

ビンゴ!当たりました!やっぱり「揺り動かして」ですね!

そして「すすぐ」は、

*「すすぐ(濯ぐ・雪ぐ)」=(古くは「すすく」と清音)(1)水で洗って汚れを落とす。洗剤などで洗った後、水で洗う。(例)「水をかえてすすぐ」「足をすすきて導かむと欲ふ(霊異記・下)」(2)汚名・恥などのつぐないをする。恨みをはらす。(例)「汚名をすすぐ」「爾(なんじ)が為に恨(うらみ)をすすがん(こがね丸・小波)」(3)けがれを清める。(例)この世の濁りをすすぎ給はざらむ(源氏物語・朝顔)」

 

こちらは「最初の『す』」は、「擦るの『す』」ではなかったようです。

でも「古くは『すすく』」と「清音」であったと書かれています。だとすると、

「す・すく」

で、ポイントは後ろの、

「すく」

のほうではないか。この「すく」は、

「透く」「漉く」「梳く」「鋤く」

等の意味にも共通して、

「きれいにする・ととのえる」

という意味ではないか?と考えましいた。これは、近いんじゃないかな?

そして「すすぐ」の【表記】としては「濯ぐ」「雪ぐ」「漱ぐ」の3つがあり、

*「濯ぐ」=“よごれを洗い落とす。ゆすぐ”の意。(例)「洗濯物を濯ぐ」

*「雪ぐ」=“不名誉を取り除く”の意。仮名で書くことも多い。(例)「汚名を雪ぐ」「恥を注ぐ」

*「漱ぐ」=“口の中を洗う・うがいをする”の意。仮名で書く事も多い(例)「口を漱ぐ」

 

とありました。

そして「すすぐ」と似た音の言葉には(最初に書いたように)、

「そそぐ」

がありますね。「すすぐ」ために「そそぐ」のかも。「さ行」の音は「液体」と関係があるのかな?

なお「精選版日本国語大辞典」を引いたら「すすぐ」の用例としてなんと、

「8世紀(720年)の『日本書紀』」

が出てきました!「ゆすぐ」の用例は「男重宝記」で、

「江戸時代・元禄6年(1693年)」

でした。

 

(2022、6、20)