当然、これは「ロシアのウクライナ侵攻」を念頭に置いて読んだ。
でも、この本が出たのは「3年前」なんですけどね。そのときたしか「新書大賞」も受賞してベストセラーになりました。こんなに硬い本なのに。
そして描かれているのは1940年代、あの映画にもなった「スターリングラードの戦い」とその後。
読んでいて思ったのは、あの時の「ナチスドイツ」と「ソ連」が戦った場所は、今回「ロシア」が侵攻している「ウクライナ」の場所と「全く同じ」ではないか!ということ。(もちろん、「独ソ戦」は、最終的にはもっと広範囲でしたが。)つまり「地政学的」には、いつも「同じ場所」が「国と国と戦いの生命線」「戦争の境界線」になってしまうのではないかということだ。今回の侵攻(戦争)で言うと、
「ドニエプル川をはさんだ両岸の地域」
だ。もちちん「クリミア戦争」の170年昔から「黒海沿岸」も。「国境」が敷かれるのは地形から見ても「川」「山」「海」。そういったことも考え合わせて人の動きなどを考えるのが「地政学」か。
第3章「絶滅戦争」第1節「対ソ戦のイデオロギー」(78ページ)は、まさに「現在のウクライナ侵攻でのロシア」の状況を記しているかのようだ。書き抜いてみよう。
「『バルバロッサ』作戦の失敗により、ヒトラーやドイツ国防軍が抱いていた短期決戦構想は挫折し、独ソ戦が長期化することは決定的になった。それとともに、軍事的合理性にもとづき、対手の継戦意志をくじくことによって、戦争終結をみちびこうとする『通常戦争』の側面は後景にしりぞき、『世界観戦争』と『収奪戦争』という性格の異なる戦争様態の色彩が濃くなっていく。」
そしてドイツの「対ソ戦」は、「通常戦争」「収奪戦争」「世界観戦争」という3つの側面を併せ持つ「複合戦争」として始まったが、次第に前二者は、「絶滅戦争」としての「世界観戦争」に呑み込まれていったと著者は説く。(220~221ページ)
ロシアの「ウクライナ侵攻」も、同じような道をたどっているのではないかと思った。


