5月19日、NHKの夜7時のニュースを見ていたら「大相撲夏場所12日目」の結果を伝えていました。その際に女性アナウンサーが、
「霧馬山(きりばやま)は『ヨンハイ目』です」
と言ったので、「うん!?」」と思わず仕事の手を止め画面を見つめてしまいました。これって、
「4敗目」
のことですよね。それならば「敗」は、「半濁音」で、
「ヨンパイ目」
ではないのか?
もうここ20年ぐらいの傾向として、「助数詞の読み方」を覚えるのが面倒なので、
「変化させない」
という若者が増えて来ています。(その若者も、もう40代だな)
例えば、「ボールペン」は「本(ホン)」で数えるといわれても、いきなり、
「1本」
は「イチホン」ではなく、
「イッポン」
と「ポン」だし、
「2本」
で「ホン」になったかと思ったら
「3本」
は「サンホン」ではなく、
「サンボン」
だし、「1」から「3」までで、
「ポン・ホン・ボン」
という「3通りの読み方」が出て来て混乱すると。だからもう全部「ホン」でいっちゃえ!という傾向があります。覚えきれないと。
本来は、「言いやすさ」から「本」の音が「活用」していたのに、今や「覚えやすさ」から「活用しなく」なっているわけです。
その一種だろうとは思いますが、この場合は、もう一つ理由がありそうです。つまり、「清音」の「ヨンハイ目」だと、
「4杯目」
のようです。ちょっとビール飲み過ぎです。
冗談はさておき、「敗」と同じ「ハイ」と読む「杯」があり、それを「1」から順番に数えると、
「ハイ」=H、「パイ」=P、「バイ」=Bで表すと、
1・2・3・4・5・6・7・8 ・9・10
「敗」P・H・P・P・H・P・H・H(P)・H・P
「杯」P・H・B・H・H・P・H・H(P)・H・P
となります。つまり、
「3(敗・杯)」と「4(敗・杯)」だけ違う
んですね!
これは恐らく、「アクセント」が関係しているのではないか?
「敗」は「平板アクセント」なのに対して、「杯」は基本的に「頭高アクセント」なので、「3」「4」も、
*「敗」=3敗(サ/ンパイ)・4敗(ヨ/ンパイ)=「平板アクセント」
*「杯」=3杯(サ\ンバイ)・4杯(ヨ\ンハイ)=「頭高アクセント」
で、
・「平板」の「ン」=「N」
・「頭高」の「ン」=「M」
だという違いがあるのではないでしょうか?これは発見や!
あ、でも「目」を付けた「4杯目」は、「平板アクセント」で、
「ヨ/ンハイメ」
だなあ。
それと「3杯」が「サンバイ」と「B」で濁るのに、「4杯」はなぜ「ヨ\ンバイ」と「B」にならずに、清音で「ハイ」なのか?については、そもそも「4杯」の読み方は、
「シ\ハイ」
だったが、
「『シ=死』に通じる忌み言葉」
ということで「ヨン」に置き換えられたからだろうと想像がつきます。
「3階=サンガイ」
なのに、
「4階=ヨンカイ」
と濁らないのと同じ理屈ですね。
NHKの女性アナウンサーは、ビールジョッキ「4杯」が(アクセントは別にして)「ヨンハイ」なので、「負け」の「4敗」も「ヨンハイ」と「濁らない」と思ったのではないか?という想像をしてみました。
どうでしょうか?
検索したら・・・過去に『いっぱい』書いていました。
これは「イチハイ」じゃなく「イッパイ」。
平成ことば事情5503「4ハイ目を喫しました」(2014年7月)
平成ことば事情6136「1勝14ハイ」(2016年8月)
平成ことば事情6998「9勝6ハイ」(2018年10月)
もお読みください。


