8468「ヨンハイ(4敗)目」

2022 . 5 . 20

8468

 

 

5月19日、NHKの夜7時のニュースを見ていたら「大相撲夏場所12日目」の結果を伝えていました。その際に女性アナウンサーが、

「霧馬山(きりばやま)は『ヨンハイ目』です」

と言ったので、「うん!?」」と思わず仕事の手を止め画面を見つめてしまいました。これって、

「4敗目」

のことですよね。それならば「敗」は、「半濁音」で、

「ヨンパイ目」

ではないのか?

もうここ20年ぐらいの傾向として、「助数詞の読み方」を覚えるのが面倒なので、

「変化させない」

という若者が増えて来ています。(その若者も、もう40代だな)

例えば、「ボールペン」は「本(ホン)」で数えるといわれても、いきなり、

1本」

は「イチホン」ではなく、

「イッポン」

と「ポン」だし、

「2本」

で「ホン」になったかと思ったら

「3本」

は「サンホン」ではなく、

「サンボン」

だし、「1」から「3」までで、

「ポン・ホン・ボン」

という「3通りの読み方」が出て来て混乱すると。だからもう全部「ホン」でいっちゃえ!という傾向があります。覚えきれないと。

本来は、「言いやすさ」から「本」の音が「活用」していたのに、今や「覚えやすさ」から「活用しなく」なっているわけです。

その一種だろうとは思いますが、この場合は、もう一つ理由がありそうです。つまり、「清音」の「ヨンハイ目」だと、

「4杯目」

のようです。ちょっとビール飲み過ぎです。

冗談はさておき、「敗」と同じ「ハイ」と読む「杯」があり、それを「1」から順番に数えると、

「ハイ」=H、「パイ」=P、「バイ」=Bで表すと、

1・2・・5・6・7・8  ・9・10

「敗」P・H・・H・P・H・H(P)・H・P

「杯」P・H・・H・P・H・H(P)・H・P

となります。つまり、

「3(敗・杯)」と「4(敗・杯)」だけ違う

んですね!

これは恐らく、「アクセント」が関係しているのではないか?

「敗」は「平板アクセント」なのに対して、「杯」は基本的に「頭高アクセント」なので、「3」「4」も、

*「敗」=3敗(サ/ンパイ)・4敗(ヨ/ンパイ)=「平板アクセント」

*「杯」=3杯(サ\ンバイ)・4杯(ヨ\ンハイ)=「頭高アクセント」

で、

・「平板」の「ン」=「N」

・「頭高」の「ン」=「M」

だという違いがあるのではないでしょうか?これは発見や!

あ、でも「目」を付けた「4杯目」は、「平板アクセント」で、

「ヨ/ンハイメ」

だなあ。

それと「3杯」が「サンバイ」と「B」で濁るのに、「4杯」はなぜ「ヨ\ンバイ」と「B」にならずに、清音で「ハイ」なのか?については、そもそも「4杯」の読み方は、

「シ\ハイ」

だったが、

「『シ=死』に通じる忌み言葉」

ということで「ヨン」に置き換えられたからだろうと想像がつきます。

「3階=サンガイ」

なのに、

「4階=ヨンカイ」

と濁らないのと同じ理屈ですね。

NHKの女性アナウンサーは、ビールジョッキ「4杯」が(アクセントは別にして)「ヨンハイ」なので、「負け」の「4敗」も「ヨンハイ」と「濁らない」と思ったのではないか?という想像をしてみました。

どうでしょうか?

検索したら・・・過去に『いっぱい』書いていました。

これは「イチハイ」じゃなく「イッパイ」。

平成ことば事情5503「4ハイ目を喫しました」(2014年7月)

平成ことば事情6136「1勝14ハイ」(2016年8月)

平成ことば事情6998「9勝6ハイ」(2018年10月)

もお読みください。

 

(2022、5、20)