先輩・辛坊治郎さんが、去年(2021年)4月から8月にかけて「太平洋単独往復横断」という偉業を達成した。その後悔記、いや、航海記を公開している。航海したのに、全然後悔などしていないが、あれだけ準備したにも拘わらず、実際に海に出ると、思いも寄らない大波・大風が次々襲いかかり、何とかそれを乗り越えると、ふとした「いつもと違うこと」に気付いたことで、まさに命拾いをするという「運の良さ」もある。それを「運が良い」と考えられるかどうかも、大事な要素だ。そして「ふとしたこと」に気付く「観察力」「注意力」「判断力」「知識」、そういったものがないと、人間が誰一人いない「太平洋のド真ん中」では生きていけない、ということもわかる。とても私では無理だ。シンボウサン、スゴイ!
今回は、ニッポン放送の番組の絡みで「生存確認」を兼ねて、衛星電話で1日1回連絡を取ることが出来て、その“見えない糸”によっても、辛坊さんの命は支えられていた。まさに「衛星電話」は辛坊さんにとっては、「カンダタの蜘蛛の糸」のようだっただろう。
復路はまた、思いも寄らない「無風地帯」に突っ込んで、「退屈」と「暑さ」で、
「ああ、この海に飛び込んだら、涼しいだろうな・・・気持ちいいだろうな」
という誘惑に駆られるが、飛び込んだら最後、もう生きて戻ることが出来ない。「悪魔の誘惑」は、何気なく目の前に広がっている。
そうか!
これ(ヨットで単独太平洋横断)は、普通の人には出来ない、否、やろうとも思わない、とてつもなく大変なことではあるけれども、僕ら海に何の縁もない一般の人間も、実は毎日、
「人生という荒波」
と戦っているんだ!
退屈なこと、誘惑、困難。
相手が「自然」か「人間」かという違いはあるものの、そういった「闘う」ことは、同じなんだなと気付かされた。
辛坊治郎と我々の後悔、いや、航海は、まだまだ続くのである。
(追伸)
発売当日(2月28日)に本屋さんに行って新刊書のコーナーを見たのだが、平積みになってるかと思ったこの本が見当たらない。店員さんに、
「すみません、きょう発売の辛坊さんの新刊は・・・?」
と聞いたら、若い背の高い男性の店員さんが、
「ああ、『風のときは医者に行け』とか、何かそんな感じの本ですね。」
と言われたので、
「ああ、それですそれです!」
と言うと、この本が数冊だけ並んでいるコーナーに案内してくれましたとさ。


