2月10日の関東地域は大雪に備えて、各番組は箱根・八王子に中継を出し、アナウンサー・番組リポーターが現場に散っていました。八王子は午前7時台後半~8時台は、ほとんど「雨」だったようです。その際に、先輩の牧野アナウンサーがチェックしてくれたところによると、
(1)「雨とみぞれの間」「みぞれ混じりの雨」
(2)「雪とみぞれの間」
などの表現が聞かれたそうです。この、
(1)「雨とみぞれの間」「みぞれ混じりの雨」
という表現を聞いて、牧野アナは、
「雨と雪が混じる・・・それが『みぞれ』なんじゃないかな」
と思って調べたら、NHK放送文化研究所(文研)のサイトに「2001年」に、正にそのことが書かれていたそうです。
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/090.html
(以下引用)
「みぞれ」は、雨と雪が同時に降る現象(すでに両方がまじっている状態)です。
『学術用語集-気象学編』でも、「mizore/みぞれ」の項は「sleet; rain and snow mixed [together]」と記述されています。つまり、「みぞれ」の中に「雨」がまじったり「みぞれ」の中に「雪」がまじったりすることは、現象としてありえないということになります。
このため、「みぞれまじりの雨(雪)」という言い方は、的確・適切な表現ではありません。
ところで、その冬初めて降った「みぞれ」の場合は、気象観測では「初雪」とされます。
なお、俳句や演歌の歌詞に登場することが多い「氷雨(ひさめ)」は、「ひょう」「あられ」と並んで「みぞれ」とも同じ意味で一般に使われていますが、気象用語としては使いません。(『改訂版気象ハンドブック』P152、P267、P102『ことばのハンドブック』P177参照)
それをメールで知らせてくれたので、これまであまり気にしていなかった私も、調べてみました。すると『読売テレビ放送用語ハンドブック第3版』『放送で気になる言葉2011』にはこの項目は載っていませんが、日本テレビの用語ガイドラインには、
「『みぞれ混じりの雪(雨)』という表現はない」
とはっきり載っていました。
また、『新明解国語辞典・第八版』では
*「みぞれ」=雨と雪が交じって降る現象。(雪が空中で溶けて、半ば雨になったもの)
とあります。
『NHKことばのハンドブック第2版』(195ページ)には、
*「みぞれまじりの雨/雪」=「みぞれ」は雨と雪が混ざった状態なので「みぞれまじりの雨」という表現は、現象としてありえないので、不適切である。
とありました。さらに調べると、以下のサイトにも記述がありました。
2013年12月「毎日ことば」
https://mainichi-kotoba.jp/blog-20131207
そして、なんと自分でも書いていました。「毎日ことば」より少し早い2013年3月。
https://www.ytv.co.jp/michiura/time/2013/02/post-1573.html
さらに「産経新聞」2014年にも。
https://www.sankei.com/article/20140216-QVJX2FDTU5OGJJ4XFKSCAYQY3U/
こうやって調べていて思ったのですが、
「みぞれ混じりの雨・雪」
が頻出する原因に関して、
「かき氷」の「みぞれ(シロップ)」
の存在があるのではないでしょうか?(無色のかき氷)
『新明解国語辞典』などは「みぞれ」は「現象」を指すと書かれていました。
でも「雪」「雨」は「天気という現象」も指すと同時に「物」も指しますよね。
だから「みぞれ」も「現象」だけでなく「物」も指すと思って、
「みぞれになった」(現象)
ではなく、
「みぞれが降った」(物)
と言ってしまう。その際に「物」として「かき氷のみぞれ」を連想して、
「『みぞれ』(=細かい氷が少し解けた状態)混じりの『雪・雨』」
と言ってしまうのではないでしょうか?
「雨」「雪」に比べ「みぞれ」の頻度が少ないことも、この連想に拍車をかけているのではないか?と思いました。
ということで、
「みぞれ混じりの雪(雨)」
は使わないことにしたほうがいいでしょうね。
きょう(2月10日)の「ミヤネ屋」の東京・八王子からの中継で、中島リポーターは、ちゃんと、
「雨が降ったり、雪が降ったり、みぞれが降ったり」
「水分を多く含んだ『みぞれ』」
というような表現にしていました。これならOKかな。


