高峰秀子『わたしの渡世日記(下)』(文春文庫)を読んでいたら、
「老いの体にムチ打って」(114ページ)
という表現が出て来たのに目が留まりました。
というのは、先日の関西地区用語懇談会で、
「『老体にムチ打って』というのは間違いで、正しくは『老骨にムチ打って』だ」
という意見が出たので、
「へえーそうだったのか!」
と思って辞書を引くと、たしかにそのようです。
ただ、齊藤孝『常識として知っておきたい日本語ノート』(青春新書・2021)には、
「『老体にむち打つ』は一般的には使われない言い回しです」(149ページ)
と書いてありましたが「間違い」とまではしていません。
また『明鏡ことわざ成句使い方辞典』(北原保雄編著、大修館書店、2007)には、
「老骨に鞭(むち)打つ」の項目(494ページ)の(3)に、
「『老骨に鞭打つ』が本来だが、『老骨を鞭打つ』とも。また、『老体に鞭打つ』『老躯(ろうく)に鞭打つ』ともいう」
と書かれていました。
高峰秀子さんがこれを書いた昭和50~51年(1975~76年)には、もう、
「老体にムチ打つ」
は使われていた表現と言えそうですね。
(2021、10、26)


