8175「ツィマノウスカヤか?チマノウスカヤか?」

2021 . 8 . 12

8175

 

 

東京五輪で、ベラルーシの女子選手の亡命問題で、選手の名字が

「ツィマノウスカヤ」「チマノウスカヤ」

と「2種類」出て来ます。これが、

「新聞」=ツィ

「放送」=チ

と完全に分かれているのです。これが「ロシア語」ならば、

「チ」

のほうが原音に近いと、ロシア語に詳しい人に聞いたのですが、なぜか「新聞」は「ツィ」に統一されているようです。

用字用語に詳しい、日本新聞協会の用語専門委員・関根健一さんに聞いたところ、

「五輪の公式ホームページでは、

『クリスツィナ・ツィマノウスカヤ』

となっていて、新聞の外来語表記の原則に抵触しない限りは、それに合わせているのではないか」

という答えが返って来ました。

新聞の原則は、1991年の内閣告示にある「外来語の表記」によるとのことで、そこには、

「一般的に用いる仮名」

「原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名」

2種類の表があり

「ツァ、ツェ、ツォ」=「一般的に用いる仮名」

「ツィ」=「原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名」

なのだそうです。

つまり今回のベラルーシ選手の場合は

「原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名」

なのですが、

「新聞」=「原つづり」になるべく近く書き表そう=「ツイ」

「放送」=「原音」になるべく近く書き表そう=「チ」

となったのではないか?

「目から入った外来語」と「耳から入った外来語」の違い

かもしれませんね。同じ名前なのにカタカナ表記が違う例で有名なのは、

「目から入った外来語」=ヘップバーン

「耳から入った外来語」=ヘボン

がありますが。

なお「外来語の表記」(1991年内閣告示)の細則には、

「ソルジェニーツィン」「ティツィアーノ」

が例示されていて、注には、

「一般的には チと書くことができる」

として、

「ライプチヒ」「ティチアーノ」

とあります。つまり、イタリアの画家は、

「ティチアーノ」「ティツィアーノ」

2種類の表記が認められているということですね。今回のケースも、それと同じなのでしょうかね?

 

(2021、8、12)