8100「大夫はタユウか?ダユウか?」

2021 . 6 . 24

8100

 

 

「文楽」の義太夫の語り手である、

「太夫」

という芸名は、江戸初期に「義太夫節」を創始した「竹本義太夫」以来、

「○○太夫」

と表記されてきたのですが、大正・昭和の名人として知られる「豊竹山城少掾(やましろのしょうじょう)」が、歌舞伎で浄瑠璃を語る「太夫」と区別するために、

「大夫」

とすることを提唱し、195354年に「○○大夫」という表記に変更されたそうです。

しかしそれが、

2016年4月」

に「『太夫』に戻したい」との文楽技芸員の声を受け、約60年ぶりに、

「○○太夫」

が復活しました。問題は、その読み方です。

「タユウ」か?「ダユウ」か?

実はこれには「規則性がある」と言います。

「『太夫』の前の名前が1・3音節」=タユウ(濁る)

「『太夫』の前の名前が2音節」  =ダユウ(濁らない)

というのです。

実際はどうなのか?「公益法人・文楽協会」のサイトで名前を拾ってみました。

「文楽」以外にも、いくつか拾ってみました。

「高尾太夫」は吉原で最も有名な遊女。

「伊呂波太夫」はNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」で尾野真千子さん演じたキャラクターの名前。

「コウメ太夫」はお笑いタレントで、いずれも「3拍」で「ダ」と濁ります。

【1拍】=ダ

竹本義太夫(ぎだゆう)

 

【2拍】=タ

豊竹咲太夫(さきたゆう)

豊竹呂勢太夫(ろせたゆう)

豊竹靖太夫(やすたゆう)

竹本織太夫(おりたゆう)

竹本綱太夫(つなたゆう)

竹本聖太夫(さとたゆう)

竹本美輪太夫(みわたゆう)

竹本碩太夫(ひろたゆう)

竹本藤太夫(とうだゆう)

 

【3拍】=ダ

豊竹咲甫太夫(さきほだゆう)

豊竹咲寿太夫(さきじゅだゆう)

豊竹薫太夫(かおるだゆう)

豊竹睦太夫(むつみだゆう)

豊竹希太夫(のぞみだゆう)

豊竹芳穂太夫(よしほだゆう)

豊竹亘太夫(わたるだゆう)

竹本小住太夫(こすみだゆう)

竹本津國太夫(つくにだゆう)

竹本千歳太夫(ちとせだゆう)

竹本錣太夫(しころだゆう)

竹本文字栄太夫(もじえだゆう)

竹本南都太夫(なんとだゆう)

高尾太夫(たかおだゆう)

伊呂波太夫(いろはだゆう)

コウメ太夫(こうめだゆう)」

 

【4拍】ダ

豊竹英太夫(はなふさだゆう)

竹本文字久太夫(もじひさだゆう)

 

その結果、かなり強い「規則性」があり、「例外」は「2拍」なのに「ダ」と濁る、

「竹本藤太夫(とうだゆう)さん」

だけでした。

文楽に詳しい先輩に、この「原則」について尋ねたところ、

「人間国宝の豊竹咲太夫(さきたゆう)さん」

に直接聞いてくださったそうで、それによるとやはり、

「1・3拍=ダユウ」「2拍=タユウ」(例外はある)

とのことでした。

 

(2021、6、24)