「文楽」の義太夫の語り手である、
「太夫」
という芸名は、江戸初期に「義太夫節」を創始した「竹本義太夫」以来、
「○○太夫」
と表記されてきたのですが、大正・昭和の名人として知られる「豊竹山城少掾(やましろのしょうじょう)」が、歌舞伎で浄瑠璃を語る「太夫」と区別するために、
「大夫」
とすることを提唱し、1953~54年に「○○大夫」という表記に変更されたそうです。
しかしそれが、
「2016年4月」
に「『太夫』に戻したい」との文楽技芸員の声を受け、約60年ぶりに、
「○○太夫」
が復活しました。問題は、その読み方です。
「タユウ」か?「ダユウ」か?
実はこれには「規則性がある」と言います。
「『太夫』の前の名前が1・3音節」=タユウ(濁る)
「『太夫』の前の名前が2音節」 =ダユウ(濁らない)
というのです。
実際はどうなのか?「公益法人・文楽協会」のサイトで名前を拾ってみました。
「文楽」以外にも、いくつか拾ってみました。
「高尾太夫」は吉原で最も有名な遊女。
「伊呂波太夫」はNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」で尾野真千子さん演じたキャラクターの名前。
「コウメ太夫」はお笑いタレントで、いずれも「3拍」で「ダ」と濁ります。
【1拍】=ダ
竹本義太夫(ぎだゆう)
【2拍】=タ
豊竹咲太夫(さきたゆう)
豊竹呂勢太夫(ろせたゆう)
豊竹靖太夫(やすたゆう)
竹本織太夫(おりたゆう)
竹本綱太夫(つなたゆう)
竹本聖太夫(さとたゆう)
竹本美輪太夫(みわたゆう)
竹本碩太夫(ひろたゆう)
竹本藤太夫(とうだゆう)
【3拍】=ダ
豊竹咲甫太夫(さきほだゆう)
豊竹咲寿太夫(さきじゅだゆう)
豊竹薫太夫(かおるだゆう)
豊竹睦太夫(むつみだゆう)
豊竹希太夫(のぞみだゆう)
豊竹芳穂太夫(よしほだゆう)
豊竹亘太夫(わたるだゆう)
竹本小住太夫(こすみだゆう)
竹本津國太夫(つくにだゆう)
竹本千歳太夫(ちとせだゆう)
竹本錣太夫(しころだゆう)
竹本文字栄太夫(もじえだゆう)
竹本南都太夫(なんとだゆう)
高尾太夫(たかおだゆう)
伊呂波太夫(いろはだゆう)
コウメ太夫(こうめだゆう)」
【4拍】ダ
豊竹英太夫(はなふさだゆう)
竹本文字久太夫(もじひさだゆう)
その結果、かなり強い「規則性」があり、「例外」は「2拍」なのに「ダ」と濁る、
「竹本藤太夫(とうだゆう)さん」
だけでした。
文楽に詳しい先輩に、この「原則」について尋ねたところ、
「人間国宝の豊竹咲太夫(さきたゆう)さん」
に直接聞いてくださったそうで、それによるとやはり、
「1・3拍=ダユウ」「2拍=タユウ」(例外はある)
とのことでした。


