全仏オープンテニスで、試合後の記者会見拒否を表明して、実際、1回戦後の会見を拒否した大坂なおみ選手が6月1日、ツイッターで「2回戦の棄権」と、このような意思表明をした背景について英文で綴りました。その中の一文がこちらです。
「The trute is that I have suffered long bouts of depression since yhe US Open in 2018」
これを取り上げて各社、
「うつ病を告白」
と表現していました。私が見た日テレのニュースもテレ朝のニュースも、
「うつ病」
としていたのですが、NHKの正午のニュースでは、
「長い間、気分が落ち込むことがあって、それに対処するのに、本当に苦労しました」
というように「うつ病」という表現を使わずに訳していました。
午後になって日本テレビから、
「『うつ病』という表現は使わず『うつ』とする」
という連絡があったので、「ミヤネ屋」でもそういう表現で放送しました。
大坂選手のツイッターの原文の英語で「うつ病」に当たる部分は、
「depression」
という単語ですが、これを「どう訳すか」という「日本語の表現問題」ですね。
英和辞典的には、
「うつ(状態)」「うつ病」
ですが、医学的には、
「医師が『うつ病』と診断したかどうか」
で変わって来るのではないでしょうか。「診断された」とは大坂選手も述べていないから、
だと思います。(最初は単に「直訳」したのでしょう)。
また、けさ(6月1日)の日テレの「スッキリ」の段階では、
「うつ病を告白」
としていたのですが、この、
「告白」
に対して、パネリストのロバート・キャンベルさんが、
「『告白』は違うと思う。『公表』だと思う」
と言っていました。つまりこれは、英語での、
「告白(confession)」
というのは、キリスト教の影響もあるのかもしれませんが、
「罪のざんげ・自白・白状」
のニュアンスがあるので、
「『病気』に関して、単に明かした」
という場合には「告白」は使わないほうが良いということだと思いました。
ワイドショー的には、すぐに、
「告白」「激白」
あるいは、
「がんが発覚」
などと使いがちですが、こと「病名」に関しては、しかも「精神的な病気」に関しては慎重な言葉選びが必要だと思います。
「ミヤネ屋」では「告白」は避けて、
「“うつ”を公表」「“うつ”の悩みを吐露」
などとしました。
6月1日夕刊各紙での、大坂選手の「うつ」に関する表現は以下の通りでした。
【見出し】 【本文】
(読売)うつ告白 うつ病の症状に苦しんでいることを明かし
(朝日)(大阪全仏テニスを棄権) 長い間うつ病に苦しんでいたことも告白した
(毎日)精神不調を告白 長い間うつに苦しんで来た
(産経)鬱に 長い間、鬱に悩まされてきた
(日経)うつ症状告白 うつの症状に悩まされていた
また、6月2日の夕刊では「読売・産経・日経」が関連の記事を載せていました。
【見出し】 【本文】
(読売) **** うつ病の症状に苦しんでいると明かした
(産経・共同)鬱を告白 鬱に苦しんできたと告白した
(日経・共同)**** うつに苦しんできたと告白した
「産経」と「日経」は同じ「共同通信」の記事でしたが、「産経」は「鬱」と漢字を使ったのに対して、「日経」は「平仮名」で「うつ」でした。
また、この3社は「告白」を使っていました。前日、6月1日には「朝日」と「毎日」も「告白」を使っていたので、必ずしも「告白」を使ってはいけない、ということでもないのかもしれません。


