ノーベル賞作家カズオ・イシグロの最新作『クララとお日さま』を読み出したら、いきなり見慣れない言葉が出て来ました。
「場所は店央の雑誌台側」
この中の、
「店央」
が初めて目にした言葉です。結構、何回も出て来ます。意味は、
「店の中央」
だということは、すぐに分かります。しかし、
「店頭」「店先(みせさき)」
はよく目にしますが、「店央」は初見です。
国語辞典に載っているのか?調べました。手元の「デジタル大辞泉(電子辞書)」「精選版日本国語大辞典(2006)」「明鏡国語辞典(3版・2021)」「新選国語辞典(9版・2011)」「新明解国語辞典(8版・2020)」「三省堂国語辞典(7版・2014)」「現代国語例解辞典(5版・2016)」「NHK日本語発音アクセント新辞典(2016)」「岩波国語辞典(8版・2019)」「三省堂現代新国語辞典(6版・2019)」「広辞苑(7版・2018)」「大辞林(4版・2019)」には載っていませんでした。
グーグル検索してみたら(5月24日)、
「店央」=3万4700件
で、その中のトップに出て来たのが「教えてgoo!」で、少し古いですが「2003年」のもの。質問は、
「店舗の設計についての本を読んでいます。その中で『店央』『店奥』という言葉ができました。これらの言葉はどのように読むのが正しいのでしょうか?」
というもの。なるほど、「音読み」すると両方とも、
「テンオウ」
になってしまいますものね。ベストアンサーから抜粋すると、
「『テンオウ』『みせおく』と読めばよいと思います。『店先(みせさき)』に対し『店中(みせなか)』『店奥(みせおく)』と言いたかったのでしょうが、『店中』では『みせじゅう』と誤読されるおそれから『店央』を使ったのだと推察します。」
というものでした。また、「建築用語.net」というサイトでは、
「店央部(てんおうぶ)」
と振り仮名が振ってあり、「店奥部」も、
「店奥部(てんおうぶ)」
と全く同じでした。これでは区別がつかない・・・と言うか、そもそも、
「店の中央部(店央部)」=「店の奥(店奥部)」
ですよね、「店頭部」よりは?
さらに「店舗コンサルタントNET」というサイトを見たら、「アパレルショップのレイアウト」として、
「アパレルショップは、横割りのレイアウトで店舗を『店頭』『店央』『店奥』の3つのエリアに分類し、それぞれのエリアに位置特性を考慮した商品を配置します。店頭には比較的購買頻度が高い商品、店奥には購買頻度が低く単価の高い商品を配置するようにするといいでしょう。」
とありました。そうか「店央」と「店奥」は、やはり区別されているのか。
ほかのサイトでは、これにさらに、
「ファサード」
が加わっているものもありました。「店内」ではなく、その「外」の、
「店先」=「ファサード」
なのでしょうね。
「店央」は「店奥」と並んで、建築や店の配置のコンサルタント業界の専門用語のようです。そのうち国語辞典にも載るかもしれませんね。


