1976年生まれの内田さんと1975年生まれの中野さんは、同学年。割と話が合って途中からは「古くからの友人」のような語り口になっている。そういう意味で、世間一般の「普通の家族」からは外れた家族の中で育って来た二人の「本音」が語り明かされている。
いま「家族とは何か」が問われる時代だと思う。
この二人は「週刊文春WOMAN」で連載を持っている関係で、一度、公開のトークイベントをやり、その後はイベントではなく「二人きりの(編集者も同席しない)対談」を5回?行ったのをまとめたもの。
脳科学者の中野さんによると、人間には「AVPR」(アルギニン・バソプレッシン・レセプター)というホルモンの受容体に、俗に「不倫遺伝子」と呼ばれるものがあり、たった一つ、DNAレベルで言うと一文字違うだけで、振る舞いが変わってしまうのだとか。
また「自然科学は論理」、「人文科学は権威」が好まれると。
そして、キレそうな自分を抑えるのには、
「自分の思考や情動を俯瞰の目で眺める」
すなわち、
「メタ認知」
が必要だと。これをつかさどるのは、脳のDLPFC(背外側前頭前野)という領域だそうで、この部分は「30歳ぐらいまで」成長を続けるそうです。ボクはもうすぐ60歳だから、手遅れか。
二人の会話から抜粋。(149~150ページ)
中野「三十歳を過ぎて気づいたんだけど、別に性別で男にならなくても、女でも『おじさん』をペルソナとして持てるんだよね」
内田「それは多かれ少なかれみんな持っていると思う。男は男で、男に生まれたばっかりに背負いたくもない責任を一家の長として背負わされたり、『甲斐性がない』とか『男だったら泣くな』と責められたりして、それはそれで大変よね。」
中野「男性も制限されていないように見えていたけれど、実は大変なのかなって、ごく最近になって思ったよ。どちらが楽ということはないのかもなと今では思う。」
内田「もう『女のくせに』とか、とやかく言われなくなったでしょ?」
中野「いやいや『こんなに活躍されて、ご主人はかわいそうですね』と面と向かって言われたりするよ。」
内田「えー!まだいるんだ、そういう人が。」
いるだろうね。
「イエは貧しい国の子育てユニット」(180ページ)
というのも、面白い見立てだなと思いました。


