『女性差別はどう作られてきたか』(中村敏子、集英社新書:2021、1、20)

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2月の東京オリンピック・パラリンピック実行委員会の森喜朗前会長の“舌禍事件”以降「女性差別」が、いかに「日本」で広く無意識で広がっているかということが、改めて確認されたが、そのタイミングで読むには絶好の一冊・・・と書いていたら、またもや五輪関係で「開会式・閉会式」の企画担当の責任者が「侮蔑的表現」の演出を考えていたことが明るみに・・・。

女性差別は、何も「日本」だけではない。「西洋」においても、もともと「聖書」にだって記されていて。・・・という「そもそも」から「日本」における女性差別の問題点は、どこにあるか?について書かれている。ちょっと学術論文的で難しいところもあるが、大変興味深い。

フランス革命のスローガンである「自由・平等・友愛(博愛)」の「友愛(博愛)」の基になったラテン語の「frater」は「男兄弟」という意味だったので、この「自由・平等・友愛(博愛)」は「男同士だけのもの」であったという。

それが「産業革命」によって「中産階級(ミドルクラス)」が誕生して「公私の分離」が行われ、「私」=「家庭」を守る「主婦」が生まれた。それが「母」→「完全な妻」を求める中で「近代家族の誕生」につながったという。

翻って日本では、江戸時代、家における夫婦関係は「儒教」に基づく「家父長制のイデオロギー」に支配されていたが「夫婦別姓」であった。妻は「自分の家=実家」から「婚家」に「出向」しているようなものであった。「妻」は「実家の家父長(=父親)の娘」という身分のほうが「婚家の妻」という身分より重要だったということか。「家vs.家」である。

これが明治時代になると、国家による「2つの家父長制」が形成された。

(1)中国由来の、「父系による家父長制」を目指す流れ。ベイトマンによる「古典的家父長制」で、これは「父権的家父長制」で「律令制=戸籍法」に基づいて「当主」が重要となり「尊属・直系・男系」を優先した。

これに対して、

(2)西洋由来の「夫権的家父長制」は、男性である「夫」が権力を持つ。ベイトマンによる「近代的家父長制」。これは「民法」によって規定される。明治政府は「民法」を「フランス」に倣った。フランスから呼んだ「ボナソアード」が明治の民法の基盤を制定した

ボナソアード?どこかで聞いたような・・・あ、法政大学の「建学の父」的な人だ!こんなところに出てきたのか!

 

で、3月31日夕刊に載った、世界経済フォーラムが発表した、「2021年版男女平等ランキング」で、日本は156か国中120位で、先進7か国(G7)中「最下位」でした。

 

 

(2021、3、2読了)