8040「関西と近畿」

2021 . 4 . 30

8040

 

 

2020年(「去年」です。1年前に「書きさし」になっていました)6月30日、

「近畿」

の有効求人倍率が、40数年ぶりの下げ幅を記録したというニュースが流れ、その際に、

「近畿」と「関西」の使われ方の違いは?

という話が出ました。

「近畿」で自分の原稿を検索したら、何と「2003年」に書いていました。

「平成ことば事情1456近畿の失業率」

「失業率の調査」は「近畿」を使うようです。

つまり、お役所は「近畿」で、民間は「関西」なのでしょうか?

地方銀行も「近畿銀行」は「関西アーバン銀行」になりましたよね?

私が会社に入ったときの読売テレビの夕方のローカルニュース番組名は、

「きんきTODAY」

でしたが、それから37年経った今は、

「かんさい情報ネットten.

と、「きんき(近畿)」から「かんさい(関西)」に変わっています。

「近畿大学」「キンキ」という音が、英語の、

kinky」(変態の)

と似ているので、最近は、

Kindai University」(近大大学?)

に英語名称を変更したとか。世の流れは「近畿」→「関西」なのでしょうか?

「近畿」は狭く、「関西」は広い?

「近畿」のほうが、歴史がある?

「気象情報」も「近畿」の「北部・中部・南部」

などと考えていた時に読んだのがこの本です。「2021読書日記039」にも書いた、

『関西と関東』(宮本又次)

そのあたりの歴史に関しては、第一章「関西と関東の概念と境界」に詳しく記されていました。それによると、区分は歴史的に変遷があり一定ではないのですが、現在につながるあたりで言うと、「関西」は元来、

「不破・鈴鹿の二関より西」

だったがその後、

「逢坂の関以西」

になったと。

そして大和川流域地域を中心として、「南」は紀伊、「北」は丹波を分水嶺として山陰地方、その裏返して瀬戸内海に臨む播磨、淡路も含むようになった。

だから、「関西」は「狭義」では、

「近畿=畿内あるいは五畿内と一致」

するとのこと。だから「近畿」と言ったり「関西」と言ったりするわけですね。

でも「近畿」は「畿内に近い」ということは「畿内は含まない」ことに、なりはしまいか?そもそも「畿」とは、「限界」のことだそうです。

「北山抄」には「畿内」は、

「宇治都久仁(ウチツクニ)」(「ツ」は「の」の意味だから「内の国」の意味ですね。そもそも「宇治」は「内」だったのかな?)

とあり、「宮処(ミヤコ)=みやどころ」である帝都があって「一国の文化の中心をなす土地」の意味になったそうです。

大化2年(「大化の改新」が645年だから、これは西暦646年か?)には、

「東」「名墾(なばり)の横河(よこがわ=伊賀国名張郡)

「南」「紀伊の兄山(にやま=紀伊国伊都郡)

「西」「赤石(あかし)の櫛淵(播磨国明石郡)

「北」「狭々波の合坂山(おおさかやま=近江国滋賀郡)

の範囲を「畿内」と定めたとのこと。

持統天皇のとき(在位は690年~697年)、

「大和・河内・難波・山背(やましろ)」

の四つの国に対して、

「四畿内」

と言ったと「日本書紀」に記されているそうです。これにのちに、「和泉」を加えて、

「五畿内」

になりました。

そして、「山背(山城=京都)」に遷都してから(つまり平安京)、承和3年(837年)10月に、

「山城・大和・河内・和泉・摂津」

が、京都に近接するということで、

「京畿」

と呼ばれるようになり、これに、

「伊賀・伊勢・近江並びに紀伊・播磨」

を加えて、広い意味で、

「近畿」

と称するようになったそうです。「9世紀」の話かあ。千年以上の歴史がありますね。

「近畿」は「畿内とその周辺」という意味です。

これとは別に、

「上方(かみがた)」

という呼称もありますね。「上方落語」の「上方」です。「上」は「皇居の置かれた都」を尊んで呼んだ言葉で、「地方凡例録」には、

「山城・大和・河内・和泉・摂津、外に近江・播磨・丹波」

を入れて、

「上方」

と呼び、

「五畿内三州」

ともいうそうです。

また現在の「近畿地方」は、

伊勢・志摩を管する「三重県」

近江を管する「滋賀県」

山城・丹波・丹後を管する「京都府」

大和を管する「奈良県」

河内・和泉・摂津を管する「大阪府」

摂津・丹後の一部・播磨・但馬・淡路を管する「兵庫県」

の範囲と考えられると。

あれ?

紀伊を管する和歌山県」

が抜けているぞ。なんでだ???

そして「広義」と「狭義」の「関西」に関しては、歴史的に言うと、

「『関西』は必ずしも『畿内・近畿』と一致していない」

けれども、「狭義」においては、

「大体、同じ範囲を指す」

と言うことの様で、我々の認識と同じでしたね。

今日の「関西経済」というときは「近畿」よりももっと広く、

「福井県や岡山県をも含める」

と。そして「東日本」に対する「西日本」の意味でも「関西」は使われるということです。たしかに。

そう言えば、2010年12月にできた「特別地方公共団体」である、

「関西広域連合」

に所属しているのは、

「滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、神戸市」

で、ふだん私たちが「近畿地方」と呼んでいる、

「滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県」

という「2府4県」と、同じ地域内の「政令指定都市」である、

「京都市・大阪市・堺市・神戸市」

以外に、

「鳥取県と徳島県」

が加わっていて「関西」だけど「広域」であると主張していますね。

この本では、このほか「関西」と「関東」を対比して「食べ物」から「人の気質」から様々な分野を歴史的に分析しつつ、事細かに披露していて、資料としての価値も十分でした。

 

(2021、4、29)