2020年(「去年」です。1年前に「書きさし」になっていました)6月30日、
「近畿」
の有効求人倍率が、40数年ぶりの下げ幅を記録したというニュースが流れ、その際に、
「近畿」と「関西」の使われ方の違いは?
という話が出ました。
「近畿」で自分の原稿を検索したら、何と「2003年」に書いていました。
「平成ことば事情1456近畿の失業率」
「失業率の調査」は「近畿」を使うようです。
つまり、お役所は「近畿」で、民間は「関西」なのでしょうか?
地方銀行も「近畿銀行」は「関西アーバン銀行」になりましたよね?
私が会社に入ったときの読売テレビの夕方のローカルニュース番組名は、
「きんきTODAY」
でしたが、それから37年経った今は、
「かんさい情報ネットten.」
と、「きんき(近畿)」から「かんさい(関西)」に変わっています。
「近畿大学」も「キンキ」という音が、英語の、
「kinky」(変態の)
と似ているので、最近は、
「Kindai University」(近大大学?)
に英語名称を変更したとか。世の流れは「近畿」→「関西」なのでしょうか?
「近畿」は狭く、「関西」は広い?
「近畿」のほうが、歴史がある?
「気象情報」も「近畿」の「北部・中部・南部」
などと考えていた時に読んだのがこの本です。「2021読書日記039」にも書いた、
『関西と関東』(宮本又次)
そのあたりの歴史に関しては、第一章「関西と関東の概念と境界」に詳しく記されていました。それによると、区分は歴史的に変遷があり一定ではないのですが、現在につながるあたりで言うと、「関西」は元来、
「不破・鈴鹿の二関より西」
だったがその後、
「逢坂の関以西」
になったと。
そして大和川流域地域を中心として、「南」は紀伊、「北」は丹波を分水嶺として山陰地方、その裏返して瀬戸内海に臨む播磨、淡路も含むようになった。
だから、「関西」は「狭義」では、
「近畿=畿内あるいは五畿内と一致」
するとのこと。だから「近畿」と言ったり「関西」と言ったりするわけですね。
でも「近畿」は「畿内に近い」ということは「畿内は含まない」ことに、なりはしまいか?そもそも「畿」とは、「限界」のことだそうです。
「北山抄」には「畿内」は、
「宇治都久仁(ウチツクニ)」(「ツ」は「の」の意味だから「内の国」の意味ですね。そもそも「宇治」は「内」だったのかな?)
とあり、「宮処(ミヤコ)=みやどころ」である帝都があって「一国の文化の中心をなす土地」の意味になったそうです。
大化2年(「大化の改新」が645年だから、これは西暦646年か?)には、
「東」は「名墾(なばり)の横河(よこがわ=伊賀国名張郡)」
「南」は「紀伊の兄山(にやま=紀伊国伊都郡)」
「西」は「赤石(あかし)の櫛淵(播磨国明石郡)」
「北」は「狭々波の合坂山(おおさかやま=近江国滋賀郡)」
の範囲を「畿内」と定めたとのこと。
持統天皇のとき(在位は690年~697年)、
「大和・河内・難波・山背(やましろ)」
の四つの国に対して、
「四畿内」
と言ったと「日本書紀」に記されているそうです。これにのちに、「和泉」を加えて、
「五畿内」
になりました。
そして、「山背(山城=京都)」に遷都してから(つまり平安京)、承和3年(837年)10月に、
「山城・大和・河内・和泉・摂津」
が、京都に近接するということで、
「京畿」
と呼ばれるようになり、これに、
「伊賀・伊勢・近江並びに紀伊・播磨」
を加えて、広い意味で、
「近畿」
と称するようになったそうです。「9世紀」の話かあ。千年以上の歴史がありますね。
「近畿」は「畿内とその周辺」という意味です。
これとは別に、
「上方(かみがた)」
という呼称もありますね。「上方落語」の「上方」です。「上」は「皇居の置かれた都」を尊んで呼んだ言葉で、「地方凡例録」には、
「山城・大和・河内・和泉・摂津、外に近江・播磨・丹波」
を入れて、
「上方」
と呼び、
「五畿内三州」
ともいうそうです。
また現在の「近畿地方」は、
伊勢・志摩を管する「三重県」
近江を管する「滋賀県」
山城・丹波・丹後を管する「京都府」
大和を管する「奈良県」
河内・和泉・摂津を管する「大阪府」
摂津・丹後の一部・播磨・但馬・淡路を管する「兵庫県」
の範囲と考えられると。
あれ?
「紀伊を管する和歌山県」
が抜けているぞ。なんでだ???
そして「広義」と「狭義」の「関西」に関しては、歴史的に言うと、
「『関西』は必ずしも『畿内・近畿』と一致していない」
けれども、「狭義」においては、
「大体、同じ範囲を指す」
と言うことの様で、我々の認識と同じでしたね。
今日の「関西経済」というときは「近畿」よりももっと広く、
「福井県や岡山県をも含める」
と。そして「東日本」に対する「西日本」の意味でも「関西」は使われるということです。たしかに。
そう言えば、2010年12月にできた「特別地方公共団体」である、
「関西広域連合」
に所属しているのは、
「滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、神戸市」
で、ふだん私たちが「近畿地方」と呼んでいる、
「滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県」
という「2府4県」と、同じ地域内の「政令指定都市」である、
「京都市・大阪市・堺市・神戸市」
以外に、
「鳥取県と徳島県」
が加わっていて「関西」だけど「広域」であると主張していますね。
この本では、このほか「関西」と「関東」を対比して「食べ物」から「人の気質」から様々な分野を歴史的に分析しつつ、事細かに披露していて、資料としての価値も十分でした。


