1月20日の「かんさい情報ネットten.」で黒木千晶アナウンサーが、
「立ち行かなくなる」
という原稿の言葉を、
「タチイカナクナル」
と「行く」を「イク」と読んだのに、違和感がありました。これは、
「タチユカナクナル」
ではないでしょうか?
もちろん、単独の「行く」は、文語的には「ユク」、口語的には「イク」でしょうけれども「立ち行く」は「タチユク」しかないのではないか?
そう思って辞書を引いてみたら、やはりそうでした。
『広辞苑』『大辞林』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『岩波国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『現代国語例解辞典』『新選国語辞典』『NHK日本語発音アクセント新辞典』『デジタル大辞泉』には、
「タチユク」
は載っていても、
「タチイク」
は載っていませんでした。
ところが!
『精選版日本国語大辞典』には「タチユク」と共に「タチイク」が載っていたのです!
*「たちいく」=くらしのみちがたつ。くらしていける。たちゆく。◇浮雲(1887‐89)<二葉亭四迷>二「お前さんが官員に成ってお呉んなさらなきゃア私どもが立往(タチイ)かないと云ふんぢゃ無いから」
なんと、二葉亭四迷の「浮雲」からの引用です。
でもこの口調は「江戸っ子」っぽいなあ。いわゆる「標準語」ではないのではないかなあ。
現代の放送では、
「タチユカナイ」
で読んでくれないと「タチユカナイ」気がしました。
(2021、1、20)


