『「肌色」の憂鬱~近代日本の人種体験』(眞島亜有、中央公論社:2014、7、10)

2020 . 12 . 7

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タイトルに惹かれて購入したものの、400ページ近い厚さと、まさに「学術論文」である文章の硬さに、敬遠していたのであるが「そろそろ読まなくちゃ」と読んだ。随分、時間がかかりましたが、大変勉強になる一冊でした。

たとえば

「劣等感とは所属感の欠如から生じる意識感情である」

というのは「なるほど!」と思いました。

内村鑑三や夏目漱石が、いかに「西洋」と対峙したか。それは「文明開化」の時代であり、特に肌の色など気にしてこなかった日本人が、「西洋人=白人」の存在を知ることで、

「自分たちは『白人』ではないのだ。『黄色人種(有色人種)』なのだ」

と知り、そこから何とかして、

「白人になろう」「白人に並ぼう」

と、あるいは、

「白人を超えよう」

とあがいて来た歴史が「近代化」であると。それを、具体的な人物を描くことで証明していった論文。

それは「明治」の文明開化だけの話ではない。

文明開化の果ての「第二次世界大戦での敗戦」で、「占領国日本」から立ち上がろうとした時代にフランスへ留学した作家・遠藤周作を取り上げる。

たしかに、「日本人」でありながら「西洋人の神」である「キリスト」教の信者となった遠藤は、留学時に知り合ったフランス女性との“婚約”を、帰国後に反故にした。その後、人間の・日本人の存在を問い続けた。その初期の作品「白い人・黄色い人」などは。まさにダイレクトにそういった問題が表れているし「深い河」「沈黙」も「信仰」がテーマである。

「肌の色」を巡っては、今年は(も?)アメリカでは事件と暴動が起こり、

「Black Lives Matter(BLM)」

という言葉がよく聞かれた。そういう年だけに、この本を読む意味もまたあったのではないかなあ。

 

 

(2020、12、3読了)