タイトルに惹かれて購入したものの、400ページ近い厚さと、まさに「学術論文」である文章の硬さに、敬遠していたのであるが「そろそろ読まなくちゃ」と読んだ。随分、時間がかかりましたが、大変勉強になる一冊でした。
たとえば
「劣等感とは所属感の欠如から生じる意識感情である」
というのは「なるほど!」と思いました。
内村鑑三や夏目漱石が、いかに「西洋」と対峙したか。それは「文明開化」の時代であり、特に肌の色など気にしてこなかった日本人が、「西洋人=白人」の存在を知ることで、
「自分たちは『白人』ではないのだ。『黄色人種(有色人種)』なのだ」
と知り、そこから何とかして、
「白人になろう」「白人に並ぼう」
と、あるいは、
「白人を超えよう」
とあがいて来た歴史が「近代化」であると。それを、具体的な人物を描くことで証明していった論文。
それは「明治」の文明開化だけの話ではない。
文明開化の果ての「第二次世界大戦での敗戦」で、「占領国日本」から立ち上がろうとした時代にフランスへ留学した作家・遠藤周作を取り上げる。
たしかに、「日本人」でありながら「西洋人の神」である「キリスト」教の信者となった遠藤は、留学時に知り合ったフランス女性との“婚約”を、帰国後に反故にした。その後、人間の・日本人の存在を問い続けた。その初期の作品「白い人・黄色い人」などは。まさにダイレクトにそういった問題が表れているし「深い河」「沈黙」も「信仰」がテーマである。
「肌の色」を巡っては、今年は(も?)アメリカでは事件と暴動が起こり、
「Black Lives Matter(BLM)」
という言葉がよく聞かれた。そういう年だけに、この本を読む意味もまたあったのではないかなあ。
(2020、12、3読了)


