7848「絆は強める?深める?」

2020 . 12 . 25

7848

 

2018年1月19日の「ミヤネ屋」で出て来て、迷った表現があります。それは、

「絆」は「深まる」?「強める」?

でした。

調べてみると、この問題は「毎日新聞校閲部」のサイト「毎日ことば」で、2015年3月7日に取り上げられていました。岩佐義樹記者(用語懇談会での知り合い)によるものです。

http://www.mainichi-kotoba.jp/2015/03/blog-post_7.html

 

それによると、読者からの質問で、

「絆を深める」

とよく言うが、語源的に正しくは

「絆を強める」

ではないのか?「絆」を「心のつながり」と解すれば、「深める」のほうがしっくりいくのだが・・・というものでした。これに足して岩佐さんは、

『結論からいうと「絆を深める」は間違いではありません。

「新明解国語辞典」で「絆」を引くと、「現代のペルー人とその祖先との絆を深める」「日欧間の絆〔=修好〕を深める」「平和への絆〔=連帯〕を強める」などの用例が載っています。「絆を深める」「絆を強める」ともに使えることが分かります。

毎日新聞でも両方使われていますが、記事データベースでは「絆を深め」が「絆を強め」の約4倍という件数となっています。

「絆」の語源は「動物をつなぎとめる綱」(新明解国語辞典)とのこと。「綱」だから「深める」ではなく「強める」が正しいとする意見も、それなりに説得力があります。しかし、語源的というなら、「動物をつなぎとめる綱」は取りも直さず「自由を束縛するもの」です。』

 

文章はまだ続きますが引用はこのぐらいで。

以下はサイトを読んでもらいましょう。岩佐さんは、「2011年」の「東日本大震災」でよく使われた「絆」が、この時点(2015年)で使用が減って来ていることを心配されていました。「震災」「絆」を共に使った「毎日新聞」の記事の件数は、

2010年  37件

2011年1141件

2012年1203件

2013年 604件

2014年 383件

と「絆」(と「震災」)の使用件数が減って「風化」してきていることを懸念されています。その後どうなったのかも気になります。

あと3か月足らずで「東日本大震災」から「10年」。決して風化させてはなりますまい。

この日の放送では、

○「絆が深まる」△「絆を強める」

ということにしました。

 

(2020、12、24)