11月6日の「ズワイガニ」のセリで250万円の値が付いたというニュース。
この「カニ」の数え方を、
「一杯250万円」
とするのか、それとも、
「一匹250万円」
とするのかで、報道デスクが迷ったそうです。調べたら、
「生き物として数えるときは“匹”で、商品としては“杯”(盃)」
というニュアンスで書かれているのが多かったそうですが、セリ落とされたときは、
「生きている」
し、同時に、
「商品」
でもあるし・・・と相当悩んだそうです。そして最初は、
「一杯」
にしていたのですが、他社がほとんど、
「一匹」
としていたので結局、
「一匹」
で放送したそうです。
「どちらが正しかったのでしょうか?」
と質問が来たので、私は、
『「ズワイガニ」の件ですが、私がデスクならやはり「匹」ですね。「セリ」は「卸売」で、まだ「小売の商品でない=食材としての生き物のカニ」という理解ですね。ここから、もしかしたら「食材加工」される、つまり「茹でガニ」になったら「杯」ですかね。』
と答えました。そして、
「去年(2019年)2月の用語懇談会での討議では、このような内容の話がありました。ご参考までに。」
として、その際の討議内容を送りました。それは以下の通りです。
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『カニの数え方は、「一匹」か「一杯」か?』(TBS)
弊社のラジオニュースで、「鳥取県の境港で、松葉ガニのイベントが行われ、観光客らにカニ一匹とカニ汁がふるまわれた」という原稿(共同通信の原稿)を放送した後、「カニは、一杯二杯と数えるのでは?」という声が上がりました。調べると、「生きているカニは『匹』で数え、水揚げ後(締めるなどして)死んだものについては『杯』で数える」とあり、「観光客らにカニ一匹とカニ汁がふるまわれた」という表現は間違いではないと思えますが、次に、「では、『匹』と『杯』の境目はどこだ?」という意見が出ました。「観光客らにふるまうなら、もう生きていないだろう。あるいは茹でたカニをふるまったのかもしれない。それでも『匹』を使うのが正しいのか?」という意見や、さらに「集まった人に一匹(一杯)ずつ配っていたら相当な数になる。茹でたカニを半分にした一肩(ひとかた)ずつだったのではないか?」といった推理まで飛び出し、収拾がつかなくなりました。弊社では、カニの数え方に関してルールがないのですが、“この状態では『匹』、こういう状態では『杯』”と明確に使い分けている社はありますか?あるならば、その判断基準は何でしょうか?また、テレビ通販番組以外で『肩』を使って数えることはあるでしょうか?(イカも同様に、生きているものは『匹』、水揚げされ死んでいるものについては『杯』で数えるとなっていますが、この境目・使い分けはどうされていますか?)
→(共同通信)うちの原稿だったというので、原稿データベースを調べてみた。「カニ」だけだと引っかかりにくいと思い「ズワイガニ・〇杯」「ズワイガニ・〇匹」で検索をかけたところ、「杯」=0件、「匹」=80件だった。(注・検索期間は不明)今回のような「街ダネ」は、ローカル版しか出て来ない。「杯」は、あまり使っていないようだ。
カニが生きていると「匹」、死んで商品になれば「杯」と言うが、たとえ死んでいても「生きの良さ」(「とれたて」など)を強調したいときは「匹」になるのではないか。
(NHK)「カニ」に関しては、基準はハッキリしている。「食材かどうか」が基準。NHKは「カニ・イカ」は基本「匹」だが、「食材」=「杯」。あと「枚」「肩」(足だけ)という助数詞も使う。先日テレビで、「まいうー」で有名な「ホンジャマカ」の石塚英彦さんが「豚が歩いている」のを見て、「“ピッグ”が歩いているように見えない、“ポーク”が歩いているように見える」と話していたが、これも「『食材』と見るかどうか」ということだろう。
という話し合いが行われました。


