「新型コロナウイルス」の「PCR検査」に関して「陽性」「陰性」の他に、
「疑陽性」「偽陰性」
があります。共に、
「ぎ」
という読みの漢字が頭に付きますが「表記」が、
「疑」と「偽」
で違います。さらに『広辞苑』では、
「擬陽性」
と、
「手へん」の「擬」
が出て来ました!これは、なぜでしょうか?
他の国語辞典は、
<明鏡国語辞典>「擬陽性(疑陽性)」
<新明解国語辞典>「擬陽性・疑陽性」
<デジタル大辞泉>「疑陽性・擬陽性」
<三省堂国語辞典>「疑陽性・擬陽性」
<三省堂現代新国語辞典>「疑陽性・擬陽性」
<精選版日本国語大辞典>「擬陽性」
この『精選版日本国語大辞典』はちょっとおかしくて、見出しは「擬陽性」なのですが、用例の松田道雄「赤ん坊の科学七」(1949)は、
「それが陰性か疑陽性(直径が九ミリより下)だったら」
というように、
「疑陽性」
になっているのです。また、多くの辞書では、
「元ツベルクリン反応で」「今は、『陰性』になっている」
と書かれていますが、これだけ、
「新型コロナウイルスのPCR検査」
で出て来たら、「ツベルクリン」だけの話にはなりませんよね、これからは、というかすでに。
そして国語辞典には、「陰性」に「ぎ」が付く、
「偽陰性」「疑陰性」「擬陰性」
は載っていません。ところが、東京大学保健・健康推進本部保健センターのサイトでは、
☆「疑陽性」=本当は新型コロナウイルス感染症でないのに陽性と出てしまう。
☆「疑陰性」=本当は新型コロナウイルス感染症であるのに、陰性と出てしまう。
と載っていて「陽性」「陰性」共に、
「疑」
で書かれていました。「偽」ではないのでしょうか?
新聞や放送の表記の基準となる日本新聞協会・新聞用語懇談会編『新聞用語集2007年版』に「ぎようせい」は、
「(擬陽性)→〇【学】疑陽性」
となっていました。【学】というのは、
「文部科学省が制定した学術用語」
ということです。
つまり「陽性」に「ぎ」が付く場合の表記は「疑」を使って、
「疑陽性」
のようです。「偽」とまでは断定できないのでしょう。そしてそれは「ツベルクリン反応」では「陰性」と判断される。しかし
「疑陰性」
は、
「検査結果は陰性なのに、陽性かもしれない」
という“ややこしい存在”なのですね・・・よくわかりません!
そこで、いつもの中学からの友人で内科医のO君に聞いてみました。
その結果は、
「PCR検査では、昔から『偽陽性』『偽陰性』」
だと。そしてそれぞれ、
☆「偽陰性」=本当は陽性なのに、検査結果は陰性と出た人
☆「偽陽性」=本当は陰性なのに、検査結果で間違って陽性と出た人
だそうです。
そうすると、辞書などに載っている「疑陽性・擬陽性」は、
「ツベルクリン反応」
に対するもので、
「PCR検査」
に対するものとは「意味」が違うのではないか。
この辺りの対応を、11月に開かれる「新聞用語懇談会」で各社に聞こうと思っています。


