「サラリーマン」
という言葉は「マン=男性」に偏っている。
「女性サラリーマン」
とは言わない(つまり「対語がない」)ので、
「会社員・勤め人」「ビジネスパーソン」
にしたほうが、いいのではないだろうか?
という指摘が出たのは2017年の「関西地区用語懇談会」で朝日新聞の委員からでした。
その際の各社の意見は、
(読売新聞)「サラリーマン」は使っている。他に代わる言葉がない。この1年間のデータベース検索では「ビジネスパーソン」=60件。女性についても「OL」「キャリアウーマン」は違和感があり、女性でも「サラリーマン」を使っている。
(日経新聞)男女とも「サラリーマン」(特定の人を指さない場合)を普通に使っている。特定の人(女性)を指す場合は「OL」「キャリアウーマン」を使う。
(ytv)女性に「サラリーマン」を使うのは違和感ない。「マン=男」ではなく「マン=人」。「人類」は「マンカインド(mankind)」。英和辞典を引いたら「mankindはジェンダー的に問題があるので、最近はhumankindが使われる」と書いてあったが・・・。しかし、そんなに「マン=男」にこだわるほうが「性差別的」にも感じる。最近は「OL」が、女性サラリーマンの呼び名として実態に合わないようになってきている気がする。
(毎日新聞)「OL」は、軽い補助的な仕事をする女性従業員を指すので、それ以外には使わないことになっている。
(朝日新聞)「OL」という言葉は、めったに出て来ない。
(ytv)テレビニュースでは「昼休みに制服姿のOLが」「OLに大人気の店」「サラリーマンやOLたちが」のように、しょっちゅう原稿に出て来る。
(読売新聞)「東電OL事件」(=1997年)で「OL」という表現が問題になって以降、「OL」は使わなくなった。
(朝日新聞)「女性カメラマン」は使う気がする。「女性フォトグラファー」だと長すぎ、「女性写真家」とすると大層な感じがするからか?
(TV各局)男でも女でも「カメラマン」としか言わない。「カメラマン」の「マン=人」で、「マン=男」ではない。
というものでした。
あれから3年、今回(2020年10月)、オンラインで開かれた「関西地区用語懇談会」では、中国新聞の委員から質問が出ました。
(中国新聞)ジェンダー関連で「○○マン」という呼び方は「性差別」にならないか?「女性のサラリーマン」と呼んでいいのか?「OL」と呼んでいいのか?「サラリーマン」は「給与所得者」「会社員」などと言い換えるのか?「カメラマン」が女性の場合は「女性フォトグラファー」とするのか?「フォトグラファー」は、まだなじまない気がするが。「カメラマン」は「和製英語」で、アメリカでは(英語では)「カメラマン」とは言わないと聞いたが、「〇〇マン」という「和製英語」は、使ってはダメなのか?
また「男優・女優」は、数年前までは「俳優」に直していたがキリがないので、今は「出稿のまま」で直していない。ただ「死亡記事」で、女性の俳優の肩書が「女優」と「俳優」で2つ並んでいたら、違和感がある。
これに対する各社の意見は、
(ytv)「サラリーマン」は使っている。(NHKの番組で「サラめし」というのもある。この「サラ」は「サラリーマン」の略。しかし「脱サラ」は死語か?)「女性カメラマン」も使っていると思う。この「マン」は「男」ではなく「人」と解釈している。唯一、「ミヤネ屋」で「マン」を直しているのは「キーマン」。これは、ほぼ全て「キーパーソン」に直している。
(読売新聞)「銀行マン」「宣伝マン」「証券マン」などは使わず「会社員」にしている。「スポーツマン」は「アスリート」にすることが多い。
(ytv)サッカーの反則の名前で、以前は「非紳士的プレー」と呼ばれていたものが、いつの間にか「反スポーツ的プレ-」という呼び名に変わっていた。「なでしこジャパン」の活躍で「女子サッカー」の認識が広がったので、「紳士」は使いにくくなったのだろう。
(朝日新聞)「サラリーマン」は、「男性会社員」の場合「個人」には使う。「勤労者一般」には使わない。「女性カメラマン」は出て来る。「写真家」「フォログラファー」とすることもある。
というようなものでした。


