足の筋肉が痙攣(けいれん)して突っ張った状態になり、とっても痛いこと、ありますよね。これを、
「足がつる」
と言います。若い頃は、サッカーの試合で足がつったりしましたが、年を取って来るとサッカーなどしていなくても、寝起きに伸びをしただけで足がつり、あるいは逆に寝ていたら足がつって痛くて目が覚めたりします。熱中症でもそういうことがあるのでしょうかね?水分不足?
ところでこの「足がつる」を、サッカー中継などを見ていると、実況アナウンサーや解説者が、
「足をつる」
と言っているのを、よく耳にします。
助詞は「が」「を」、どちらが正しいのでしょうか?考えてみました。
「足がつる」は、
「『足が』“勝手に”つった状態になる」
それに対して「足をつる」は、
「“自分の意思で”『足を』つった状態にしたような感じ」
だから違和感があるのです。
漢字で書くと、「足が」だと、
「足が攣(つ)る」
ですが、「足を」だと、
「足を吊(つ)る」
という感じですね。
腕を骨折したときに三角巾で、
「腕を吊る」
と言いますから、もしかしたらその辺りから「混同」されたのかもしれませんね。
グーグル検索では(8月18日)
「足がつる」=89万8000件
「足をつる」= 6万1700件
でした。
国語辞典で用例を見てみると、
*「足がつる」=『広辞苑』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』『旺文社標準国語辞典』『三省堂国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『新選国語辞典』『新潮現代国語辞典』『大辞林』
*「すじがつる」=『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』
*「足(の筋)がつる」=『岩波国語辞典』
*「足の筋がつる」=『現代国語例解辞典』
*「ふくらはぎがつる」=『大辞林』
ということで。「(足)を」は、一つもありませんでした。
全て「が」なのですが、「が」の前は、「足」「筋」「足の筋」「ふくらはぎ」と。ある程度バリエーションがあるものの、全部「足」ですね。
『精選版日本国語大辞典』の「スジ(筋)ガツル」は、1603年の『日葡辞書』から引いて来ています。私は時々、
「首(筋)」「顎」
がつることもありますが。「首『を』つる」ではなく「首『が』つる」です。お間違いなく。
若いAD数人に聞いてみたら、ふだんの「話し言葉」では助詞を使わずに、
「足、つった」
と言うそうです。なるほど、そりゃそうだ。ふだん助詞を使わないから助詞を間違う。
また、
「骨折で腕を吊る」「首を吊る」
等からの類推で、
「足をつる」
が出てきてしまったのかもしれませんね。


