7658「足がつる?足をつる?」

2020 . 8 . 18

7658

 

足の筋肉が痙攣(けいれん)して突っ張った状態になり、とっても痛いこと、ありますよね。これを、

「足がつる」

と言います。若い頃は、サッカーの試合で足がつったりしましたが、年を取って来るとサッカーなどしていなくても、寝起きに伸びをしただけで足がつり、あるいは逆に寝ていたら足がつって痛くて目が覚めたりします。熱中症でもそういうことがあるのでしょうかね?水分不足?

ところでこの「足がつる」を、サッカー中継などを見ていると、実況アナウンサーや解説者が、

「足をつる」

と言っているのを、よく耳にします。

助詞は「が」「を」、どちらが正しいのでしょうか?考えてみました。

「足がつる」は、

「『足が』“勝手に”つった状態になる」

それに対して「足をつる」は、

「“自分の意思で”『足を』つった状態にしたような感じ」

だから違和感があるのです。

漢字で書くと、「足が」だと、

「足が攣(つ)る」

ですが、「足を」だと、

「足を吊(つ)る」

という感じですね。

腕を骨折したときに三角巾で、

「腕を吊る」

と言いますから、もしかしたらその辺りから「混同」されたのかもしれませんね。

グーグル検索では(8月18日)

「足がつる」=89万8000件

「足をつる」= 6万1700件

でした。

国語辞典で用例を見てみると、

*「足がつる」=『広辞苑』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』『旺文社標準国語辞典』『三省堂国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『新選国語辞典』『新潮現代国語辞典』『大辞林』

*「すじがつる」=『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』

*「足(の筋)がつる」=『岩波国語辞典』

*「足の筋がつる」=『現代国語例解辞典』

*「ふくらはぎがつる」=『大辞林』

ということで。「(足)を」は、一つもありませんでした。

全て「が」なのですが、「が」の前は、「足」「筋」「足の筋」「ふくらはぎ」と。ある程度バリエーションがあるものの、全部「足」ですね。

『精選版日本国語大辞典』の「スジ(筋)ガツル」は、1603年の『日葡辞書』から引いて来ています。私は時々、

「首(筋)」「顎」

がつることもありますが。「首『を』つる」ではなく「首『が』つる」です。お間違いなく。

若いAD数人に聞いてみたら、ふだんの「話し言葉」では助詞を使わずに、

「足、つった」

と言うそうです。なるほど、そりゃそうだ。ふだん助詞を使わないから助詞を間違う。

また、

「骨折で腕を吊る」「首を吊る」

等からの類推で、

「足をつる」

が出てきてしまったのかもしれませんね。

 

(2020、8、18)