『還暦からの底力~歴史・人・旅に学ぶ生き方』(出口治明、講談社現代新書:2020、5、20第1刷・2020、6、4第4刷)

2020 . 7 . 6

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私も来年「還暦」。そろそろ、いろいろ考えなければならない。

この本は出た時に「買おうかな?」と思ったが、買ったら書店の人に、

「この人、“還暦”なんだ」

と思われるのが恥ずかしくて、買えなかった。

するとある日、85歳になった父親が、

「この本、もう読んだか?」

と言って、渡してくれた。

「もう読んだから、返さなくていいから。」

還暦を控えた息子へのプレゼントであった。だって「85歳」の父が「『還暦』の底力」というタイトルの本を買う理由がない。

いや、実は一つあった。著者の出口治明さんの「父」が、うちの両親の「恩師」で「仲人」なのである。つまり出口治明さんは、両親の「知り合い」なのだ。だから出口さんの著作は大体、読んでいるようだ。でもこのタイトルだもんな。

読んでみると、出口さんが主張されていることは「サブタイトル」にあるように、

「いくつになっても『歴史・人・旅』に学ぶ生き方は大事である」

というその一言に集約されている。別に「還暦」にこだわっていない。自らも、そうしてきたと。ただ、恐らくほとんどの人は、それが出来ない。この本を買って読む人は、まあそういうことを「やろう!」という意気込みのある人だから、出来るかもしれないが、できない人はそもそもこの本を買わないし読まない。だから、出口さんの主張が届く範囲は限られている、とそんなことを考えてしまいましたね。「哲人政治」的な教育なんですよね。

「教養=知識×考える力」

で、この「考える力」が大切だと。そりゃあそうだ。出口さんが学長を務める「立命館アジア太平洋大学(APU)」も、そういう方向なのかな。大学は、それでいいんでしょうね。あとは、

「多用性(ダイバーシティー)が重要。単一性は、国を亡ぼす」

これは「国」の枠もそう、「男女」の枠もそうだと。そして、

「人間はそれほど賢くないというのが、保守の神髄」

なるほど。「革新派」は「人間は理想的になれるはずだ」と考えるが、過去の歴史から、それは達せられていない。「人間」「人類」はここ1万年、進化していないという・・・。そうかも。

最初の方に出て来た(59ページ)この話は、納得・腹落ちしました。

「僕が大学生のときに教えを受けた政治学者の高坂正尭(こうさか・まさたか)先生は『いま生きている人でわけのわからない話をする人には二通りある。物事の本質を理解していないか、ある程度理解はしているが格好をつけるためにわざと難しい言葉を使っているかどちらかで、どちらにしてもロクなもんじゃない』といわれていました。そのときから、僕は『わかりやすい』ということに最大の価値の一つをおくようになりました。」

それは放送業界も同じですねえ。

 

 

(2020、7、5読了)