『サガレン~樺太/サハリン 境界を旅する』(梯 久美子、角川書店:2020、4、24)

2020 . 7 . 29

2020_084

 

たまたま本屋で見かけた。タイトルの「サガレン」に惹かれた。合唱をやっている私は、草野心平作詞・多田武彦作曲の男声合唱曲「草の心平の詩から」の中に、

「サガレン」

という言葉が出てくることを知っていたが、実はこの曲は歌ったことがなく聴いただけだったので、この「サガレン」の意味がわからなかった。しかし、この本を見て、

「そうだったのか!」

と思ったのだ。

「サガレン」=「樺太(サハリン)の旧名」

だったのだ!そうだったのか!

そして、書き手は、信頼に足る作家・梯久美子さん。(同い年)

表紙の写真にも、心を惹かれた。青い空白い雲その果てに向かって伸びる線路。「旅情」と言うのですかね、そこに「サガレン」という大きなおしゃれな黄色い文字。良い装丁です。写真撮影も、梯さんご本人です。梯さんが「鉄ちゃん」(乗り鉄)で「廃線マニア」とは知らなかった。

本書は大きく2部に分かれていて、「1部」はまさにサハリン鉄道に乗って北緯50度の「国境」まで行く旅。なかなか樺太には行かない(行けない)から、読んでいるだけで、

「GoToトラベル気分」

が味わえます(笑)。しかも旅費はかかりません。本代だけ、1700円(税別)。

「2部」は、実は過去に宮沢賢治とチェーホフが、この「サガレン」を訪れているのだそうで、その宮沢賢治の足跡を辿る旅。これが実に味わい深い。

「1部」は、沢木耕太郎の『深夜急行』のサハリン版だが、「2部」はもう「文学の旅」。本書のタイトルは『宮沢賢治とサガレン』とか『サガレン~宮沢賢治の魂の旅を追って』とかにした方が良かったと思う。

実は「宮沢賢治」も合唱曲で歌うことが多いのだ。全部、繋がって来ますねえ・・・。

 

 

(2020、7、21読了)