『グランドシャトー』(高殿円、文藝春秋:2019、11、15)

2020 . 7 . 29

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本屋さんで、たまたま見かけた。去年の11月に出て、もう半年以上経っている。不勉強で著者の名前も知らないし、作品のことも知らなかったが、やはり「大阪・京橋」の会社に勤めて30年、毎日毎日通っている身としては、このタイトル「グランドシャトー」に惹かれた。そう、関西人の中高年以上はみんな知っている、あのCMソング、

♪京橋は ええとこだっせ グランシャト―が おまっせ

で有名な大阪・京橋に実在するキャバレー「グランシャトー」が舞台なのだ!

昭和30年代後半から時代は「平成」へ。姫路の家に居られなくなった少女が、72歳になるまでホステスとして働いて来た「キャバレー」の歴史、「昭和」の歴史をともに描いている。

あとで、著者のインタビューをネット記事で読んだら、主人公は「和田アキ子」さんと「上沼恵美子」さんを足して2で割ったイメージだそうだ。また、「やしきたかじん」さんを彷彿させる男も出て来る。

主人公と、その主人公が姉と慕う「真珠」が一緒に住む長屋は「中崎町」にある。京橋と中崎町、この設定も良い。作家で放送作家の増山実さんの作品にも“匂い”が似ているなと感じた。おもしろかった。

ちょうど読み終わった日に、「グランシャトー」のCMソングを歌っていた「リリアン」の訃報を知る。69歳。

いま、「昭和」は終わった。

 

 

(2020、7、19読了)