7518「吸気口と給気口」

2020 . 6 . 12

7518

 

「キューキコウ」

と読む「空気の通り道」を漢字で書くと、

「吸気口」「給気口」

の2通りあります。どう違うのでしょうか?漢字から考えると、

・「吸気口」=外気(空気)の吸い込み口。反対語は「排気口」。

・「給気口」=外気(空気)を室内に送り込む口。

ですね。

「吸気」「動物」に関してと、「蒸気機関」や「内燃機関」つまり「エンジン」で使われているようです。「動物」の「吸気」の反対語は「呼気」でした。「蒸気機関」や「内燃機関」では反対語は「排気」です。

とりあえず、辞書に載っていそうな「口」を取った、

「吸気」「給気」

を引いてみると・・・、手元にある『広辞苑』『明鏡国語辞典』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『新選国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『現代国語例解辞典』『新潮現代国語辞典』には、

「吸気」は載っていますが「給気」は載っていません。

マスコミの使う用字用語辞典『新聞用語集2007年版』『読売スタイルブック2020』『共同通信記者ハンドブック第13版』『朝日新聞の用語の手引・改訂新版』『改訂新版・毎日新聞用語集』『NHK漢字表記辞典』(2018、12、20)には、

「吸気」も「給気」も載っていません。

唯一、去年(2019年)秋に出た『大辞林・第4版』には、何と、

「吸気」「給気」ともに載っていました!

それによると、

・「吸気」

=(1)吸う息。吸い込んだ息。⇔呼気

(2)気体を吸い込むこと。特に内燃機関で、燃料の混合気を気筒内に吸い込むこと。また、その気体。⇔排気

・「給気」

=内部に空気を送り込むこと。⇔排気

(ネットで検索したら『大辞林』は「第3版」にも「給気」が載っていました。

「給気」=内部に空気を送り込むこと。⇔排気)

ということは、もともと「きゅうき」というのは、

「吸気」

しかなかったが、そのうち(2)のほうの意味に近く、

「反対語は『排気』」

に当たるが「内燃機関」などではないものに使う「きゅうき」に、

「給気」

という漢字を当てるようになってきたのではないか?

そして「給気」が使われるのは、

「ビルやマンション、一戸建てなどの建物」

であることを考えると、

「セントラルヒーティングなど冷暖房が普及した『気密性が高い建物』で用いるようになった言葉」

なのではないでしょうか?

ハウジング用語では昔から、

「給湯」「給水」

がありますから、「お湯」や「水」ではなく、「空気」を「配給する」ことを、

「給気」

と書くようになってきたのではないかな。

比較的新しい言葉だと思われますが、新しい言葉をいち早く取り入れることで知られる『三省堂国語辞典』も「2014年」に出た「第7版」にも載っていませんでした。

グーグル検索(6月12日)では、

・「吸気」=1910万件

・「給気」= 500万件

でした。

なお、「空気の通り口」には、

「換気口」「通気口」「排気口」

という表現もありますね。

 

(2020、6、12)