7466「血は燃え肉躍る」

2020 . 5 . 21

7466

 

今、放送しているNHKの朝ドラ「エール」は、作曲家・古関裕而さんの生涯を描いたものです。古関さんと言えば、わが母校・早稲田大学の、現在の第一応援歌(作曲当時は「第六応援歌」)、

「紺碧の空」

の作曲者として稲門(早稲田OB・OG出身)では知られています。阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」や、読売ジャイアンツの応援歌「闘魂こめて」も、古関さんの作曲です。すごいなあ。

それまでの応援歌「第一」から「第五」で応援していたら、野球の早慶戦で、慶應になんと「11連敗」してしまい、その原因は慶應の新しい応援歌「若き血」にあると。これに打ち勝つためには「新しい応援歌」を作らねばならぬと。その作曲を、応援団が古関裕而さんに依頼したのです。

それまでの古い応援歌を私はよく知りませんが、フェイスブックに記してくれた方がいらっしゃいます。それによると、

旧第一応援歌「競技の使命」(作詞:五十嵐力 作曲:山田耕筰・昭和3年)

旧第二応援歌「ああ若き日の血は踊る」(作詞:三上於菟吉 作曲:近衛秀麿・昭和3年)

旧第三応援歌「天に二つの日あるなし」(作詞:西條八十 作曲:中山晋平・昭和3年)

旧第四応援歌「日輪輝く」(作詞:山田千之 作曲:草川信・昭和5年)

旧第五応援歌「大地をふみて」(作詞:小出正吾 作曲:草川信・昭和5年)

だということです。「旧第三応援歌」である、

「天に二つの日あるなし」

は、学生時代、グリークラブに所属していて「レコーディング」をしたことがあるので知っていますが、後の4曲は全く知りませんでした。

そんな旧応援歌の一つ「旧第一応援歌」の「競技の使命」という曲があります。フェイスブックでその音源と歌詞のテロップがUPされていたので聴いて&見てみたところ、歌詞の中に次のような一節が。

 

「血は燃え 肉躍る」

 

え?これは普通は、

「血沸き 肉躍る」

なのでは?「血」は「燃え」ますかね?「気」は「燃え」ますよね、「闘魂」も「燃え」ますよね。でも「血」は、

「沸いたり」「滾(たぎ)ったり」

するのではないか?と思いました。

昔は、そういう表現もあったのかな?

あ、よく見たら、「旧第二応援歌」のタイトルも、

「ああ若き日の血は踊る」

と、「血」が「踊ってる」、「肉」ではなくて。

しかも「躍動」の「躍る」ではなく、「舞踊・ダンス」の「踊る」だ。

結構、「何でもOK」だったのかな。

と、ここまで書いてこの日(5月20日)の「朝日新聞」夕刊を見ていたら、

「血湧き肉躍る 回想記」

という見出しを見つけました。

あれ?「沸き」じゃなくて「湧き」なの?

と思い『新聞用語集2007年版』を見たのですが、載っていません。

『朝日新聞の用語の手引き・改訂新版』を見たら、なるほど、

「血湧き肉躍る」

と載っていました。そして、読売新聞社の『読売スタイルブック2020』『共同通信記者ハンドブック第13版』

「血湧き肉躍る」

となっているではありませんか!

『改訂新版・毎日新聞用語集』は(ちょっと古い2007年発行ですが)載っていませんでした。

国語辞典で「わく」を引くと、『広辞苑』『新選国語辞典』『現代国語例解辞典』『大辞林』『新潮現代国語辞典』『精選版日本国語大辞典』も、

「血湧き肉躍る」

となっていて『精選版日本国語大辞典』には用例として、菊地幽芳『己が罪』(前)(1899‐1900)から、

「むらむらとして血湧き肉躍リ、噛しめたる歯は自づと鳴響き」

とありました。

「湧」

なのかあ…。

『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』には載っていませんでした。

そんな中『三省堂国語辞典』は、「血」で引くと、

「血沸き肉躍る」

で載せていました!ただし【表記】に関しては、

『「沸き」は「湧き」とも書く』

と注記がありました。『三省堂現代新国語辞典』も、

「血沸き肉躍る」

でした。「三省堂」は「沸」なのか?うーん、悩ましい!

グーグル検索では(5月20日)、

「血湧き肉躍る」 =10万5000件

「血沸き肉躍る」 = 4万9400件

「血は燃え肉躍る」=      2件

でした。

「湧>沸」で、割合は「2:1」ですね。

「血は燃え」は、たったの2件で、どちらもこの「旧第一応援歌」に関するものでした。つまり「これしかない」ということですね、ネット上では。

 

(2020、5、20)