『百舌(もず)落とし』(逢坂剛、集英社:2019、8、30)

2020 . 5 . 12

2020_054

 

 

「帯」の文章が、簡潔に全てを語っている。

「スタートから33年、ついに」

「公安と殺し屋の攻防を描いた“伝説の物語”を見届けろ!」

「MOZUシリーズ完結!!」

帯の裏側には過去の作品の歴史が。

1986年『百舌の叫ぶ夜』

1988年『幻の翼』

1992年「砕かれた鍵」

1996年『よみがえる百舌』

2002年『鵟(のすり)の巣』

2015年『墓標なき街』

…そして物語は驚愕の結末へ。

「殺し屋“百舌”との最後の戦いが、いまここに幕を開ける。」

 

ああ、おなか、いっぱい。

逢坂さん、33年もの長きにわたり、お疲れ様でした。最初の1986年『百舌の叫ぶ夜』なんて、直木賞受賞作で私が逢坂剛にハマるきっかけになったの『カディスの赤い星』と同じ頃に書かれたのでは?…と思って検索したら、やっぱり同じ年に書かれてる。ということは、この「百舌シリーズ」への逢坂さんの思い入れも強かったんでしょうね、これだけ続けたんだから。

ちなみに私が小学校時代に住んでいた「大阪府堺市」で、最寄り駅は「百舌鳥(もず)駅」でした。だから小学校に入る前から「百舌鳥(もず)」は読めましたが「鳥」が付かなくても「百舌(もず)」なんだなあ。

それにしても、この「百舌」の物語、最初からもう33年・・・その間に出た本が、たった7冊。正直、2002年の『鵟(のすり)の巣』までは読んだ覚えがあるが、2015年『墓標なき街』は、読んだかどうか定かではない・・・・。

1986年『百舌の叫ぶ夜』から1996年『よみがえる百舌』までは「2年・4年・4年」の間隔で、まだ話の筋は覚えていられたが、そのあとが「6年・13年・5年」。13年も空いたのは致命的である。出て来る「証拠」が録音されたメディアが「カセットテープ」「ICレコーダー」「USBメモリ」。「カセットテープ」で取ったような古い証拠が「USB」の時代に役に立つのか?もう関係者はいなくなっていて「歴史的事実」になっているのではないか?その間、一体、主人公たちは何をしていたのか?など、細かい所で「小道具」に引っかかってしまって、なかなか物語に入り込めない。話の中身、ストーリーは完全に忘れてしまっている。それでこの474ページの物語を読むのはきつかった。ようやく何とか入り込めたのは300ページを過ぎてからでした。

最初に「登場人物一覧」があればよかったのに。付けるべきだと思った。

気になった点、77ページのこの表現。

*「しかし。さすがに、洲走まほろは、かりほの妹だな。その、ぶっ飛んだしたたかさというものは。まさに姉譲りってとこだろう。」

「姉譲り」。「姉」からも譲られるのかな?「親譲り」ならわかるけど。

 

 

(2020、5、11読了)