『おせっかいな神々』(星新一、新潮文庫:1979、5、25初版・2002、11、5第57刷改版・2012、3、5第71刷)

2020 . 5 . 8

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ああ、懐かしい!中学時代にむさぼり読んだ星新一(1926.9~1997.12)。もう亡くなられてから20年以上経つのか。新たに買って読もうと思ったのが8年前で、「積ん読」になっていたのを、本棚の整理をしていて出て来たので読む気になった。これ「71刷」って、とんでもないロングセラー・ベストセラーですね!

ショートショート、短編が40編。この本の初版(単行本)は1965年7月、つまり前の東京オリンピックの翌年に出されたものですね。55年前。そんな前になるのか。その当時考えられた「近未来」が、どんどん「現代」になって来ています、今。「ブレードランナー」とか「バック・トゥー・ザ・フューチャー」とかみたいな感じですね。また「星新一」もリバイバルで「ドラマ化」「映画化」されないかな?うちでやるか?

久しぶりに読んだ星新一の「ショートショート」の1つ目は「笑い顔の神」。(【注!】これはネタばれになります。)本当にショートショートで「6ページ」しかないのだが、「オチ」を読んで、そのどんでん返しに「アッ!」となった。

ある男が拾った「笑い顔の木彫りの像」。その像が男に語りかけてきて、男の「金持ちになりたい」という願いを叶えてくれた。男は大金持ちになって、この像に感謝する。

「あなたは福の神だ!」

するとその木彫りの像が笑い顔で言う。

「いや、わしは『貧乏神』だ。人々が苦しみながら貧乏になるのを見物するのが何よりの楽しみなのだ。」

男が大金持ちになったおかげで、村人たちはどんどん貧乏になった。それを「貧乏神」は楽しんでいたのだという。しかし・・・

「村人たちはもうどん底だ。まもなく、連中が一揆をおこして押しよせてくる。この家は荒らされ、わしは、がらくたといっしょに、川へ捨てられるだろう。つぎにはどんなやつが拾うか、それを想像すると面白くてたまらない。」

ここで話は終わっているが、当然このあとは、

「青くなる男の顔」

ですよね。それを書かないところが、また奥ゆかしいというか、読み手の想像力に任せているのですね。

これを読んで思ったのですよ、「新自由主義経済」で「中間層」がなくなって、「超富裕層」と「貧困層」の2極化してきている「現代」を。

現代の世界の状況は、実はこの「笑い顔の神」のせいではないか?そして「新型コロナウイルス」は、ある意味では「笑い顔の神」の願望を打ち消す効果があるのではないか?いや、逆に促進してしまうか・・・。

考えさせられるお話でした・・・。

 

 

(2020、5、4読了)