7440「前広に」

2020 . 5 . 7

7440

 

 

4月29日、安倍首相が衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学校休校問題で出てきた「9月入学」に関して答弁し、

「これぐらい大きな変化がある中においては、『前広(まえびろ)に』さまざまな選択肢を検討していきたい」

と述べました。この中の、

「前広(まえびろ)に」

という言葉は、初めて目にする・耳にする言葉でした。最初は、文脈から言って、

「前向きに」

だと思って「ミヤネ屋」では意味をテロップで補ったのですが、校閲チェックの元・読売新聞のYさんが「毎日新聞」のネット記事を見て、

「行政では『あらかじめ・前もって・時間の余裕を持って』という意味で使われる、と書かれていますが・・・。」

というのを教えてくれたので、「ミヤネ屋」のテロップは、

「前広に(時間の余裕を持って)検討したい」

と出しました。

大きな国語辞典(『精選版日本国語大辞典』)には「前広(まえびろ)」は載っていて、

【1】前方を広く開いたさま

【2】(ある時点より前の広がりをいう)以前。「まえびろに」「まえびろから」の形で、前もって、あらかじめ、かねてよりの意味に用いる

とありましたが、「前もって」「あらかじめ」「かねてより」では、文章の意味をなさないと思っていました。

×「前広に検討したい」→「前広(前向き)に検討したい」

→〇「前広に(時間に余裕を持って)検討したい」

 

翌4月30日の朝刊各紙は、「前広に」について説明はなかったですが、唯一「毎日新聞」が、前日のネット記事と同じような説明をしていました。それによると、

「9月入学に関して首相が使った『前広』という語句は、官庁では『時間の余裕を持って検討する』という趣旨で使われるため、首相の念頭に『今年9月』があったかどうかは不分明。」

最後の「不分明」も分かりにくいですけど。

「わからない」

でいいんでしょうが、それだと「5文字」で「不分明」だと「3文字」きっと。

「文字数がいっぱい、いっぱい」

だったのでしょうね。この記事は、

「飼手勇介、宮原健太」

という2人の記者の署名がありました。

 

(2020、5、6)