皆さんよく見かける、
「QRコード」
あのグチャグチャっとした四角いマークみたいなやつですね。これが実は、
「登録商標」
だというのはご存じでしょうか?つまり「商品名」なのです。
放送・報道ニュースでは通常、
「『特定商品名』は『普通名詞』に言い換える」
ことになっており、「QRコード」の普通名詞の呼び方は、
「二次元バーコード」「二次元コード」
等です。しかし実際は、そのまま「QRコード」を使っていることが多いように思います。そこで新聞用語懇談会の各社の委員に、現状と対応について聞いてみました。
「『QRコード』は『デンソーウェーブ』の特定商品名で、言い換えは『二次元バーコード』等だと思いますが、皆様は言い換えをされているでしょうか?言い換えされている場合はどのように言うでしょうか?また、されていない場合の理由は何でしょうか?ご教示ください。よろしくお願いします。」
各社の回答は以下の通りです。
【日本テレビ】
おたずねの件、昨年の9月に関東地区幹事会でも「日々の事例」で提起されていまして、白黒つかない興味深い状況でしたので、その時のメモをお送りします。宜しくお願いします。
↓以下、メモです。
◇QRコードについて
開発元のデンソーウェーブのホームページには、「QRコードの使用自体は自由だが、『QRコード』という文言を使う場合は、同社の登録商標であることを記載せよ」とあります。しかし、QRコードの言い換えや登録商標を記載したものを見たことがありません。同社と報道機関で何か申し合わせがあったのでしょうか。ご存じの方はご教示ください。
(中日新聞)
◆要旨◆デンソーウェーブは商標の明記を希望しているが、実際には明記なしに使っても黙認してもらえている。
(日本テレビ)商標を扱う著作権契約部に確認したところ、申し合わせはないとのこと。日本テレビでは企業から同様の要望があっても、登録商標であることを示すRマークを原則入れない方針で、「QRコード」に対しても例外ではなく入れていない。なお、トラブル予防や過度な宣伝になることを避けるために、なるべく一般名詞「二次元コード」への言い換えを勧めている。
(毎日)用語集には「QRコード(使用可)」と記載。「できるだけ登録商標であることを記載してほしい」とデンソーウェーブには言われているが、いやな場合は“二次元コード”を使用する。
(共同)ハンドブック13版を作るときに「QRコード」について協議。デンソーウェーブは「QRコード」の登録商標に加えて特許も取得しているので、デンソーウェーブの言い分はもっともだとの判断から、一般名詞への言い換えをそれまでのハンドブックに載せていた。しかし他社は使っているのになぜうちは使えない?と社内から訴えがあり、デンソーウェーブに問い合わせたところ、商標であることを明記しなくていいとは言ってくれないが、黙認の方向であることが窺え、共同のハンドブックからは言い換えを削除した。
<フジテレビ>①
FNSの用語部会では、「二次元コード」に言い換えています。
<フジテレビ>②
弊社では、「QRコード」は、言い換えはしていません。「QRコード」ではない、「二次元バーコード」を見かけることは、まず、ありません。放送で取り扱う場合も、「QRコードで情報が見られる」と言った紹介がほとんどで、それを、「二次元バーコード」と言って、伝わるのか、という問題があります。なお、去年、関東地区幹事会で、「QRコード」の使用について、質問が出ました。「デンソーウェーブ」のHPに、「『QRコード』の文言を使う場合は、デンソーウェーブの登録商標であることを記載せよ」と記載されているが、商標登録だと、記載した記事を見たことがない、との質問です。毎日新聞と共同通信は「デンソーウェーブ」と話をし、事実上、黙認というニュアンスだったのでそのまま使っていると説明していました。
<テレビ東京>
お尋ねの件を報道の原稿システムで調べたところ、「QRコード」が約680件に対して、「二次元バーコード」は8件でした。
何故そうなっているかはわかりませんが、「QRコード」が一般的になっていて「特定商品名」との認識が少ないのかもしれません。あとは取材先が「この『QRコード』を読み取ってください」という風に発言すれば、そのまま放送されたり原稿化されたりするのではないかと推測されます。言い換えるとしたら「二次元バーコード」以外には思い浮かびません。
<MBS>①
「QRコード」以外では、視聴者にはわかってもらえないと思います。MBS用語委員会の判断ははっきり知りませんので、個人的な意見ですが、言い換える必要はないのではないでしょうか。「二次元・・・?それ何」ってなるなら、意味はありません。
<MBS>②
「QRコード」ですが、「二次元バーコード」以外の言い換えは難しいと思います。
「QRコードと呼ばれる二次元バーコード」
{QRコードなどの二次元バーコード」
として、特定商品であることをぼやかすしかないかと。
<MBS>③
「QRコード」については、数年前に一度社内用語会議で、
「特定商品名なので要注意。言い換えは『2次元バーコード』」
と注意喚起はしました。しかし、
「『QRコード』で浸透しているので言い換えるとわかりにくい」
「『QRコード』以外の2次元バーコードが使われることはまずない」
という理由で、「QRコード」と言うことを容認しています。
ニュースではあまり出てきていないと思いますが、バラエティーではよく「QRコード」
とそのまま言っています。
<ABC>①
お尋ねの件ですが、私は普通に「QRコード」と読んでおります。理由は「『デンソーさんの商標』だとは知らなかった……」につきます。「2次元コード」と言ってすぐ判るなら、そう呼び換えるべきでしょうが、多分「バーコード」と勘違いされる方も居られようかと(推測ですが)。「宅急便」は、同業のライバル会社が簡単に思いつきますので、「宅配便」(他社のサービスの場合)等は言い換えの要がハッキリしますが、「QRコード」の場合「類似品」とか(混同されることでデンソーさんの不利益をもたらす、ライバル会社のよく似たシステムとか)があるのでしょうか?「フロッピーディスク」なんかもそうだった記憶がありますが、「他に、容易に混同しうるライバル会社の商品(商標)が出回っていれば、気をつけねばならない」でしょうし「ほぼ、そのジャンルで独占的」かつ「もはや一般名詞化」しておりかつ「商標を持つ企業が、厳重な用語管理を求めていない」ならば、そして「視聴者が一番わかりやすい」なら許容されるのかなあ、と勝手に解釈している次第です。
<ABC>②
「QRコード」の件ですが、ABCテレビでは結果的に「言い換えをしていません」。様々な二次元バーコードがある中で、「QRコード」がほぼ独占状態にあるため、実際に言い換える必要がないからです。もし「QRコード」以外のバーコードを紹介、表記する場合は「二次元バーコード」という言葉を使います。
<テレビ大阪>
テレビ大阪のニュースの中で「QRコード」を使用したのは2005年から数えて17回です。「2次元バーコード」と言い換えているのは、2回です。(2005年、2019年)
⇒デスクにより、認識に違いがありました。リリースをそのまま原稿化してしまっていた、との記者の回答もありました。この問いによって、問題意識が芽生えましたので、「2次元バーコード」への言い換えを基本にしていくことになりそうです。ありがとうございます。
また弊社の場合、最近VTRを用いない、モニターを使用してのパネルトークの場合、記者やディレクターのPCで作成後プリントアウトされ、原稿システムに残していないケースがほとんどです。原稿システムの使用例(数値)が、意味を持たない状況となっています。ご了承ください。
<朝日新聞>
念のため、用語部門にも確認しましたが、朝日新聞の状況は以下の通りです。
「QRコード」は、そのものを指す場合にしか使われず、同類の総称としての使用ではないので、特に言い換えはしていません。一般的な名称への言い換えの例は限られ、統一もしていませんが、形状を考慮して「バー」を入れない「2次元コード」が多くなってきています。
<毎日新聞>
毎日新聞は2018年6月から「使用可」にしております。それまでは「コード」「二次元コード」などに言い換えておりました。使用可の判断は以下の通りです。
■デンソーウェーブの登録商標であることから、用語通達で注意喚起され、毎日新聞用語集「特定商品名の言い換え」に収載された「QRコード」は、同社の登録商標であることを記事中で説明したり、登録商標であることを示す○Rマーク(丸の中にR)を付けたりすることが難しい場合に限り、当事者の了承が得られたため使用可能となりました。
<日本経済新聞>
現状では「QRコード」をそのまま使用しており、「2次元バーコード」への言い換えを含めて、対応を検討しているところです。なお、すでにどなたかからお聞きかもしれませんが、この問題は、昨年9月の関東用懇で中日新聞から質問がありました。当方の記憶によると、毎日新聞はデンソーウェーブからの申し入れを受け、言い換えたり商標であることを明示したりするよう社内で通達を出したものの、その後出稿部から「他紙は使っており解禁してほしい」との要望があり、現在は事実上使用可となっているとのことでした。
共同通信もデンソーウェーブとのやり取りがあり、同社の申し入れを受け入れたものの、実際は「黙認」してもらって言い換えも説明もなく使っているそうです。


