7400「発出」

2020 . 4 . 8

7400

4月7日午後5時43分、安倍首相は「緊急事態宣言」を、

「発出」

しました。この「はっしゅつ」と読む言葉は、聞き慣れません。

きょう(7日)の「ミヤネ屋」では、

「発出」「発令」

共に使いましたが、「ミヤネ屋」OA後に、

「『かんさい情報ネットten.』では『発出』は、言葉が聞き慣れないので言い換える。そして『発令』は使わない」

と報道デスクが言っていました。え>そうなの?なんで?と思っていたら、実際「ten.」で中谷キャスターは、安倍首相が「発出」した直後は、

「発令しました」

と2度、言いましたが、その後は黒木アナを含めて、

「緊急事態宣言を出した」

と言っていて「発令」は使っていませんました。

私が、他局を見た(聞いた)範囲では(4月7日)、

日テレ「every.」=「発令」は使わず「出す」「出た」

TBS=「発表」

KTV=「出る」

NHK(BK)=「行いました」

で、新聞(4月7日夕刊)は、

「読売・毎日・産経・日経」=「発令」

「朝日」=「出す」

でした。

「日テレでは『発令』は使わないことになっているのか?」

について、東京の「ミヤネ屋」デスクにメールで尋ねたところ、

「きのう(6日)、日テレ政治部デスクから、下記のような連絡が各番組宛てに来ていました。」

として、

「原稿上の表現として、緊急事態宣言を『発令』は使わない。『緊急事態宣言を出す』『緊急事態宣言が出る』でお願いします。」

とのこと。理由は、

  • 政府が「発出」と表現しているのでそれに倣う形で、なおかつ聴き取りやすいよう「出す」「出される」を使っている。

(2)「(緊急事態)宣言」は「命令」ではないだろう、との判断。

とのことでした。早く教えてほしかった。

 

読売テレビアナウンス部でも、さっそく萩原アナウンス部長から、以下のようなメールがアナウンス部員に送られました。

『アナウンサー各位

きょう(7日)の「緊急事態宣言」に際して、夕方の各局報道で、

「緊急事態宣言を出す」「緊急事態宣言を発令」「緊急事態宣言を発出」

といろいろな言い方が出てきました。

夜勤の平松アナも「“発出”は初めて聞いた」と言っていましたが、耳慣れない言葉だし、音の上で伝わりにくいですね。

「発令」でもない内容だし「出す」でじゅうぶん、と平松アナと話しました。

その後、道浦さんからも『NTV報道が「出す」「出る」でお願いと指定してきた』という情報をもらいました。平易な言い方なのでこれがいちばんでしょう。ニュースや話題で扱うときには特段のことがない限り「出す」「出る」で伝えてください。(デスクには確認を!)

よろしくお願いします。」

 

「発出」に関して、辞書を引いてみましたが、

『旺文社国語辞典』『岩波国語辞典』『明鏡国語辞典』『現代国語例解辞典』『新選国語辞典』

には載っていませんでした。

『広辞苑』には、

・「発出」=(1)あらわれること。あらわすこと。おこすこと。(2)出発に同じ

とありますが、この意味での「発出」は載っていません。

ところが、『新明解国語辞典』には、

・「発出」=役所などから通達を出すこと。(例)局長通達を発出する

と載っていました。

また、『三省堂国語辞典』にも、

・「発出」=文書・談話などを、外に向かって出すこと(例)通知を発出する

と載っていました。「(お)役所用語」のようですね。

一方「発令」は、

『三省堂国語辞典』=辞令・警報などを出すこと。

『岩波国語辞典』=命令・辞令などを出すこと。

『広辞苑』=法令・辞令などを発布・公表すること。

『新明解国語辞典』=法令・辞令・命令などを出すこと。

などと載っていました。

この段階で、

「とりあえず『発令』を使うのは避けましょう。

(例)ד史上初”緊急事態宣言 発令→〇史上初”緊急事態宣言」

ということになりました。

 

明けて4月8日の朝刊各紙は、

「読売・日経・毎日」が「発令」を使い、「朝日」は「リード」で「出した」、産経は「宣言した」(「見出し」は共に「緊急事態宣言」で体言止め)でした。

 

【大見出し】        【リード】

(読売)緊急事態宣言 発令   緊急事態宣言を発令した

(日経)緊急事態宣言を発令   緊急事態宣言を発令した

(毎日)緊急事態宣言 発令  「緊急事態宣言」を発令した

(朝日)7都府県 緊急事態宣言 緊急事態宣言を出した

(産経)コロナ 緊急事態宣言  緊急事態を宣言した

(2020、4、8)