





今回の配達先は、ソロモン諸島。JICA青年海外協力隊員として教育支援をしている野田紗依里さん(28)へ、福井県で暮らす父・章さん(58)、母・恵さん(53)の想いを届ける。
南太平洋に浮かぶソロモン諸島は、50年ほど前にイギリスから独立した大小1000の島からなる国。紗依里さんは、首都があるガダルカナル島から飛行機で約1時間半の距離にあるニュージョージア島で暮らしている。赴任の任期は2年間。この島には体育の先生がいないため、9つの小学校と幼稚園を回り、子ども達に運動の楽しさや大切さを伝えている。
高校卒業後、地元の福井県で警察官の道に進んだ紗依里さん。数年後には、狭き門である交通機動隊の白バイ隊員となった。当時は福井県唯一の女性白バイ隊員として、地元では名の知れた存在だったという。そして交通の取り締まり、マラソン大会の先導など幅広く活躍。仕事にやりがいを感じていたが、次第に一歩外の世界で何かがしたい、福井県だけでなく世界の人の役に立ちたい…そんな思いが募り、安定した仕事をすっぱりと辞めたのだった。
放課後、紗依里さんが開いていたのはバスケットボール教室。1年前までこの町ではバスケが全く知られていなかったが、紗依里さんが子どもたちに教えると、たちまちみんなが夢中になった。しかし設備が何もなかったため、紗依里さんが町長に直談判し、つい最近バスケットコートが完成したという。子ども達はコートでいきいきとプレーし、非行に走る若者が減少したという効果もあったとか。
紗依里さんとバスケの関係は、小学3年生のときから。高校は全国大会に出場する強豪校に進んだ。10年間、バスケ一筋だった紗依里さんを支えたのは母の恵さんで、フルタイムで仕事をしながら、1日も欠かすことなく送り迎えなど娘をサポートしてくれたという。
ある日、紗依里さんが訪ねたのは、島の警察署。さらに小学校の1年生と2年生を集めて、横断歩道の前にやってきた。実は、昨年まで町のほとんどの道は舗装されておらず、最近になって急速にアスファルトの道路や標識が整備されてきたものの、いまだに信号機すらなく、横断歩道ができたのも半年ほど前。そこで交通事故を未然に防ぐため、紗依里さん自ら警察に掛け合って、子ども達に横断歩道の渡り方を教えることになったのだ。
その翌日には、地元の警察官とともに路上に立った。島には、ブレーキランプが切れていたり、タイヤがパンク寸前など、交通事故につながる整備不良の車があまりに多いことに気づき、見るに見かねた紗依里さんが警察に掛け合って検問を始めたという。「2年間という期間なので、自分ができることはなんでも、このソロモンの地でやりたいという気持ちはあります」と紗依里さんは語る。
そんな紗依里さんの毎日を見た父・章さんは、「表情を見ると、すごく元気で楽しそうなので、それが一番いいかなと思います」と喜ぶ。また、母・恵さんも「正直、驚きました。そこまでの活動をしているのは知らなかったですし、映像で見る紗依里の顔がいきいきしていて…あと、英語が話せていたのには驚きましたね」と娘の成長を実感する。
自宅は、大家のアニさん(50)宅で、家の2階を借りて暮らしている。夕食にはソロモン諸島の伝統的な蒸し料理「モトゥ」を家族と作り、週末はアニさんの親戚が暮らす小さな島へ一緒に遊びに行くことも。自然とともに生きるソロモンの暮らしも板についてきたようだ。
白バイ警官だった経歴を活かし、ソロモン諸島の人々のため、何か自分にできることはないかと日々模索し続ける娘へ、母からの届け物はネックレス。かつて母が仕事と娘の送迎を懸命に両立していた頃、いつも身につけていた“相棒”だった。大切なネックレスを託された紗依里さんの目には、思わず涙があふれる。そして、ネックレスをつけると、「お母さんのような強い女性になれるよう、これからパワーをもらって、今後も頑張っていきたいなと思います」とさらなる奮闘を誓うのだった。