





今回の配達先は、イギリス。ここでアンティークディーラーとして活動する佐々木ひとみさん(55)へ、神奈川県で暮らす父・恭二さん(85)、母・たけ子さん(83)の想いを届ける。
ロンドンから北西へ200キロ、イギリスで最も美しい場所と称される丘陵地・コッツウォルズにある小さな村の一軒家で暮らすひとみさん。アンティークディーラーを始めて15年。陶磁器をはじめとしたイギリスのアンティークをウェブサイトや日本の百貨店の催事などで販売し、執筆活動も精力的に行っている。
ある日は、アンティークを仕入れるため、オークションが開かれる郊外の大きな倉庫を訪ねた。オークションは、会場に10数人、オンラインで約400人が参加。今回、1940年代に製造されたコールポート社のティーカップ&ソーサーを狙うひとみさんは、目標落札価格を50ポンド(約11,000円)と想定した。お目当てのオークションが始まると、オンラインで1人競り合う人が。金額はどんどん上がり、結局90ポンド(約20,000円)でひとみさんが落札。安く仕入れなければ利益は上がらないが、好きなものが出ればついつい買ってしまうといい、100ポンド以上なら買わないと決めていたシルバーメッキの食器も、160ポンド(約35,000円)で落札した。
日本ではイラストレーターとして活躍していたひとみさん。自分が描く花に納得がいかず、植物の勉強をするため、29歳のときにイギリスの園芸カレッジに留学した。その時に出会ったのが、後にパートナーとなるマーティンさん。歴史が好きな彼が、ひとみさんをアンティークの世界へ導いたのだった。
こうして1年で帰国するはずが、そのままイギリスで暮らすように。妻と死別したマーティンさんと息子、そして2人の間にできた娘とともに、アンティークに囲まれ4人で楽しく毎日を過ごしていた。しかし、マーティンさんは3年前、病に冒され64歳で逝去。24時間一緒だった最愛の人の喪失はひとみさんにとって大きなものだったが、今でもアンティーク品の中からマーティンさんが書いたメモが出てくることがあり、ずっとそばにいるような気がしているという。
いまやアンティークディーラーとして、本場イギリスでも高い評価を得るひとみさん。一方で、高齢となった日本の両親は、支えとなるマーティンさんを失った娘の将来を心配していた。その点についてはひとみさんも、「日本に戻るのか、イギリスにずっといたいのか…自分の将来がどんな風になっていくのかを考える歳ですよね。お父さんとお母さんを含めて、一緒に話してもいいかもしれないですね」と率直な心境を語る。
そんな娘の姿を見た父・恭二さんは、「ディーラーを好きでやっていることが一番いいことなので、こっちに帰ってこいとかはもう言える立場じゃない」と、その仕事ぶりを認める。とはいえ、「本当に安定的な生活が確保できるのか…ちょっと将来に対する心配はありますね」と本音も漏らす。
この日はひとみさんの55回目の誕生日。イギリスらしくティーパーティーで友人たちが祝ってくれた。マーティンさんが亡き後も、彼の友人たちと変わりなく楽しい時間を過ごしているという。また、マーティンさんと共に家族になった息子のトムさん(33)も、仕事で多忙な中、時間を見つけてはひとみさんを気にかけてくれている。
25年前、イギリスで最愛の人と出会いアンティークの世界へ。今も日々、価値ある品を求め奔走する娘へ、両親からの届け物はひとみさんが20歳の頃に作った食器。さらに、父が自分の日記から娘との思い出を抜粋し、それらをまとめたレポートも。そこには、25年前に娘が旅立った時のことや、イギリスに孫の顔を見に行ったことが綴られていた。父の日記を読み、忘れかけていた両親との時間が蘇ったひとみさんは、「父親はあまり言葉には出さないけど、強い想いがあったんですね…」と感慨に浸る。そして、両親に対し「いつまでも元気でいてほしい」と願うのだった。