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#8355月10日(日) 10:25~放送
メキシコ

 今回の配達先は、メキシコ。世界一周中の旅人・岩崎圭一さん(53)へ、群馬県で暮らす父・正一さん(92)、母・和子さん(85)の想いを届ける。
 世界一周の旅を始めて25年になる圭一さん。28歳の時、まずは試しにヒッチハイクで日本一周に挑戦した。そして1年後、韓国から自転車で世界一周の旅をスタート。以来、25年間一度も日本に帰ることなく、アジア、インド、中東、ヨーロッパと12万キロを走破し、訪れた国は83か国にものぼる。「人力で世界一周をする」というコンセプトのもと、街乗り用の自転車に総重量30キロの家財道具を積み込む。世界の観光地よりも人々の生活に興味を持っていたといい、自転車で移動するからこそ見られる景色や人との出会いがあるのだという。
 1日の走行距離は約100キロ。あくまで人力にこだわり、大西洋は手こぎボートで、ヨーロッパから南米大陸まで106日間、6200キロを横断した。こうして3年前、南米に上陸しアメリカに向かって北上。現在はメキシコの首都・メキシコシティを走行中で、200キロ先のサンティアゴ・デ・ケレタロを目指している。
 目的地・ケレタロに到着するやいなや、圭一さんは路上でマジックを始める。すると、瞬く間に人だかりができた。旅に出て1年後、ネパールで食事に困ったとき、路上でマジックを披露したところ思いのほか好評を博した。以来、各国の街角でマジックをするうちに言語も身につき、今では10か国語を操る大道芸人となった。とはいえ、この25年間はずっとギリギリの生活。どんな国でも安く手に入るパスタで空腹を満たす毎日だが、「何を食べてもおなかを壊さないですし、入院したこともない」と、丈夫に生んでくれた両親に感謝している。
 圭一さんは大学卒業後、父が営む会社で働いていたが、世界を見たいという夢がどうしても諦めきれなかった。そんなわがままを許してくれた両親に心配をかけまいと、行く先々からの便りを欠かすことはない。一方、両親もまた息子にひと目会いたいと、イタリアやネパールまで出向いたことも。実は、父はかつて「船乗りになって世界を旅したい」という夢を抱いていた。そんなこともあって、自身は山登りをささやかな趣味としながら、息子の無謀な旅を反対することなく見守ってきたのだった。
 日本を旅立って25年。圭一さんはそろそろ四半世紀にも及んだこの旅を終わらせようとしていた。このままメキシコからアメリカへ北上し、西海岸のサンフランシスコから手こぎボートで太平洋を横断。日本に戻ることを計画している。到着予定は2027年。帰国後は、、「芸をしながらどうにか食いつないでいければ。世界中で芸をしてきた経験を生かして、日本の人も笑わせて、楽しませられたらいいですね」と語る。そして大道芸人として生計を立てるため、1つでも多くの技をマスターしようと練習に励んでいる。
 現在の息子の姿を見て、母・和子さんは「丈夫で、健康にやってこられて、運がいいことかなと思いました」と目を細める。また父・正一さんは「私は戦中戦後の大変な中を生きてきましたから、息子にはやりたいことをやらせてやりたいという思いが強かったんです」と、旅に送り出した胸の内を語る。
 世界が見てみたい、その一心で日本に一度も帰ることなく25年。長く続いた旅を間もなく終えようとしている息子へ、両親からの届け物は、父が趣味の登山で使っていた古いカラビナ。お守りとして持っていてほしいという思いが込められていた。さらに、「無事に帰って来てくれることを祈っています」「私が元気なうちに会いたいと思っています」という母と父からのメッセージに、「玄関を開けて『ただいま』っていう気持ちになりました。群馬は温泉の名所なので、温泉にゆっくり行って旅の話でもしてあげたいと思います」と圭一さん。そして「行ってきます。また日本で会いましょう」と言葉を残し、再び自転車とともに旅立つのだった。