過去の放送

#8314月12日(日) 10:25~放送
タイ・チェンマイ

 今回の配達先は、タイ。チェンマイで旅行会社を経営する坂田直人さん(32)へ、神奈川県で暮らす父・元一さん(67)、母・雅子さん(64)の想いを届ける。
 直人さんは2023年にタイへ移住。2年間の準備期間を経て旅行業のライセンスを取得し、2025年10月に「マニタビ(Mani Tabi)」をオープンした。主に北タイの少数民族や山岳民族の村を訪ね、伝統的な暮らしを体験できるツアーを企画。チェンマイでツアーデスク兼少数民族が作る民芸品の店を、社員のリュウさんと共に切り盛りしている。
 あるときは新しいコンセプトの旅を企画するため、チェンマイ市内から車で4時間、山間の小さな村・ワンパイ村へやってきた。素朴でお客さんをもてなす文化があるというタイルー族の村は、食べるものが豊富で、日本人の口に合う料理も多い「美食の村」。直人さんは、ここでタイルー族料理の体験ツアーを考えていた。この日、村の人が昔ながらの道具で作っていたのは、野生のこんにゃく芋を使った麺。パクチーやライムなどで味付けした麺料理に、直人さんは「すごくおいしい」と舌鼓を打ち、手ごたえを感じる。
 直人さんの転機となったのが、大学時代にタイへ留学したとき。屋台を引く女性との出会いが価値観を大きく変えた。価格が100円ほどだったので、「もっと高く売らないんですか」と聞くと、「お客さんがおいしく食べてくれて、家族が暮らしていければそれでいい」との返事が。その言葉をきっかけに、社会が決めた正しい人生よりも、自分が楽しいと思える人生を歩みたいと思うようになったという。そして大学卒業後は、社会を勉強するため自動車メーカーに就職。さらに経営を学ぶため、世界有数のコンサルティング会社に転職した。そこで開業資金を貯め、自分が思う楽しい人生をおくろうとチェンマイでツアー会社を立ち上げたのだった。「自分とは違う価値観を知ると、新しい世界が見える。自分の人生が変わるような出会いや体験を作りたいと思って、今の事業をやっています」と直人さんは言う。
 「美食の村」では、タイルー族がジャングルに入って食材を調達し、自生する竹で鍋や串を作って料理を振る舞うというプログラムも。村から会社に戻った直人さんは、すぐに体験ツアーの企画をまとめる。タイに渡ってから休みらしい休みをとったことはない。世界中から観光客が集まるチェンマイで他社との競争に勝つため、この3年は少数民族の村へ足繁く通い関係を築いてきたのだった。
 ある日は、チェンマイに住む日本人のツアーで、タイ最大の山岳民族・カレン族の村へ。一行は直人さんの案内で、料理を一緒に作って食べるなど、カレン族の暮らしに触れていった。さらに伝統の草木染めや薬草サウナも楽しみ、知られざる村の日常を満喫。リアルな村の暮らしを体験したお客さんの評判は上々のようだ。
 現地で奮闘する息子を見た母・雅子さんは「タイに行くと肌のツヤが良くなるんですね。だからタイが合ってるのかなと思います」と笑う。一方、父・元一さんは「正直、大企業を辞めたのはもったいないと思いましたが、やっぱり彼の人生ですから、幸せだと思ってくれることが親としての幸せ。大変なこともあると思うけど、楽しくやってほしいと改めて思いました」と心境を語る。
 タイに渡り3年。少数民族の村へ行くたびに感じるのが、過疎化が進み、伝統技術が徐々に失われつつあること。「昔からの文化や技術がなくなってしまうのは本当にもったいないと思うので、残していく、広めていく、知ってもらう。ただ旅行者が楽しいだけではなくて、訪れた先の村にも還元されるような事業にしていきたいと思っています」。少数民族の伝統文化を守り、理想の人生を追いかける息子へ、両親からの届け物は破魔矢と、親戚や友人など30人以上から集めた応援のメッセージ。その中には、両親からのエールもあった。それらを読み、直人さんは「本当に応援してくれていることが伝わってきたので、その期待に応えたいですし、この人たちがもっとチェンマイに来て、チェンマイの良さ、村の良さを知ってもらいたいなと思います」と力強く語るのだった。