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#8252月15日(日) 10:25~放送
アメリカ・シアトル

 今回の配達先は、アメリカ・シアトル。ここでドッグトレーナーとして奮闘するスワンバーグ恵子さん(55)へ、山口県で暮らす父・正三さん(87)の想いを届ける。
 アマゾンやマイクロソフトをはじめ、巨大企業が本社を構え、リモートワークが徹底されているシアトル。犬を飼いやすい環境であることから、犬の数が子どもの人口よりも多いといわれる全米屈指のペット天国でもある。恵子さんは50歳を過ぎてからドッグトレーナーの資格を取得し、2021年にこの地で「ゼンドッグシアトル」を起業した。恵子さんが行うのは、「ポジティブトレーニング」というアメリカ発祥の訓練法。犬が望ましい行動をしたときにご褒美を与えるという動物学に基づく方法で、しつけを覚えさせたい犬や問題を抱える犬などを訓練している。
 自宅では、夫のデイブさん(51)と、マイルズとボウイという2匹の犬、猫たちと暮らす。実は、それまで犬も飼ったことがなかった恵子さんが動物の仕事に携わるようになったのは、アメリカに移住した25年前。アニマルシェルターでボランティア活動を始めたことがきっかけだった。飼い主から捨てられたり虐待されたりと、様々な事情を抱えた動物たちが集まるシェルターでは、犬や猫がやむなく殺処分されるという現実を目の当たりにする。その頃、シェルターで出会ったのがアキラという1匹の犬。そのたたずまいにひかれた恵子さんは、自宅で引き取ることに。そして怖がりだったアキラと暮らすうちに、多くの犬や猫がシェルターに来る理由は、実は動物の行動に問題があるからではないかと考えるようになった。その疑問から科学に基づいたポジティブトレーニングに着目し、7年間の修業を経てドッグトレーナーの資格を取得。同時に数えきれないほどの犬や猫を里子として引き取り、常に動物のことを考えてきたのだった。
 ある日はプライベートレッスンのため、飼い主の自宅を訪問。トレーニングで、大型犬とウサギを仲良くさせるという。一般的にウサギと犬の相性は悪いとされ、この家でも別々の部屋で飼われていた。そこで恵子さんはトレーニング道具を使いながら、犬にウサギは良いものだということを覚えさせた。そして3回目となる訓練で、初めてウサギと犬を対面させることに。すると2匹の距離は何事もなく縮まり、無事成功。飼い主を安堵させた。
 またある日、恵子さんが訓練の対象にしていたのは「リアクティブ犬」と呼ばれる、他の犬や人に吠えかかったり、ある刺激に対して過剰に反応する犬。最も神経を使うトレーニングだが、この日は自宅で飼っているマイルズがお手伝いで参加。ご褒美をあげることで相手の犬は怖くないということを植え付けていき、マイルズとリアクティブ犬の距離を徐々に近づけていった。
 「飼い主が理解を深めれば、シェルターにくる動物も少なくなる」と信じる恵子さん。自身は、長く闘病した母が38歳の若さで亡くなり、幼い頃から2人のおばが母親代わりになるという環境で育った。当時はあまりしゃべらない子だったといい、「大人になって思うと、自分が抱えていたストレスのあらわれだったのかな」と振り返る。そして今の仕事については、「目の前にいるこの子たちを助けることに、生きがいを感じました。自分の小さい頃の境遇を考えると、自分が助けられるものは助けたいっていう願望が強いのかもしれない」と語る。
 そんな娘のことを、「一人娘で、女房も早くに亡くしたものですから、心配はしていたんです」と話していた父・正三さん。だが今、娘がドッグトレーナーとして動物や飼い主たちを救う姿に、「初めて見ましたが、一度実際の現場も見に行きたいと思います」と目を細める。
 シェルターで暮らす動物と出会ったことで人生が変わり、1匹でも多くの動物を救いたいと願う娘へ、父からの届け物は、父と2人のおばが手作りしたウリの奈良漬け。帰国した時は必ず食べる故郷の味に、恵子さんは大喜びする。さらに「こちらは3人で何とか暮らしていますので何も心配いりませんよ」という父の手紙を読み、「いつもこうやって言うんですよね」とうなずく。そして、「母が入院したことは、私以上に父も大変だったと思う。だからその分、今までもこれからも、父とおばさんたちにはもっと幸せに生きていってもらいたい。人生を楽しんでください」と日本の家族の幸せを願うのだった。