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#81311月16日(日) 10:25~放送
スウェーデン

 今回の配達先はスウェーデン。首都ストックホルムに浮かぶ船で生活をおくる森村舞さん(36)へ、大阪府の母・美子さん(62)、妹・穂(なほ)さん(33)の想いを届ける。
 舞さんの住まいは、マリーナに停泊するヨット。5年前に購入したヨットはメインスペースと2つのベッドルームがあり、キッチンやトイレも備えている。スウェーデンで大学に通っていた時、舞さんはヨットを持つ友人に誘われ世界一周の旅に出発。スウェーデンの寒い冬から逃げるように南下し、好奇心の赴くままに船を走らせ、5年かけて世界一周を達成した。しかし、その影響でスウェーデンに戻ってからも陸の生活に慣れず、船を購入して暮らし始めたという。
 また、舞さんは「ロープテクニシャン」と呼ばれる高所作業の専門職の資格を所持し、清掃やペンキ塗り、整備点検などの仕事をしている。ある日、依頼があった現場は、高さ15メートルほどの建物。屋根からロープでぶら下がり、外から高圧洗浄を行った。最近ではその腕を買われて、海の上に建つ石油採掘現場での作業にも携わった。特殊な仕事ゆえ収入は決して悪くはないものの、フリーランスのためなかなか安定はしないという。
 7歳のときに初めて乗った飛行機に感動し、客室乗務員を目指すようになった舞さん。高校入学と同時に交換留学生としてスウェーデンへ渡った。そこで初めて目にした北欧デザインに魅了され、アートの世界に方向転換。アルバイトで学費を貯めつつ英語とスウェーデン語を猛勉強し、ストックホルムの美術大学に合格する。しかし、同じタイミングで父・栄一さんが病気に。日本に留まるべきか迷った舞さんだが、家族に背中を押されスウェーデンへ。その数か月後、父は帰らぬ人となった。おおらかで優しく、好奇心旺盛だった父。「一緒に冒険や旅ができると思って」との思いも込め、舞さんが人生をともに送る船には父の名をとって「エイイチ号」と名付けた。
 実は舞さんは、「フリーダイビング」という競技で日本代表に選ばれたことがある。潜水したまま泳いだ距離を競う素潜りの種目で、競技を始めたのはヨットで世界一周したとき、夕食を獲るために始めた魚突きがきっかけだった。スウェーデンに戻った後、本格的に学び直し、3年後の2023年には世界大会で銀メダル1個、銅メダル2個を獲得。世界2位の称号は昨年奪われたが、再び世界の檜舞台に立つため、現在も湖やプールでトレーニングに励んでいる。舞さんが得意とするのは、両足にフィンを装着して潜ったまま水平に泳ぎ、距離を競う種目。また、1枚の大きなフィンをつけて泳ぐ種目では、237メートルという当時のアジア記録を達成。フリーダイビングでは各国の代表選手をはじめ、たくさんの仲間もできた。
 スウェーデンでの舞さんについて、「どんな風に暮らしているのか」「なぜ船に行きついたのかはよくわからない」と疑問だらけだった母・美子さんと妹・穂さん。初めて現地での様子を見て、美子さんは「仕事のこともまったく知らなかったので、こんな危ないことをしているのかとびっくりしました」と驚く。一方、穂さんは「好きなことややりたいことを見つけたらとことんやる人なので、そういう意味では“らしいな”という感じです」と、姉の生き方に納得する。
 世界一周を機に人生が一変し、水と共に自由に生きる娘へ、母からの届け物は35年前、大阪で開催された「花と緑の博覧会」で配られたパンフレット。当時1歳だった舞さんが急遽モデルを頼まれ、表紙を飾ったという思い出深い1冊だ。母の手紙にはパンフレットをもらいに会場に行った日のこと、そのときの父の様子が綴られ、舞さんは「愛されてたんやなあと思いました」と涙があふれる。そして「いつも私を信頼してくれてるというか、こんなにやりたいことを思う存分させてくれる親っていないと思うし、信じてくれているって思うと頑張れる。私もお母さんとお父さんみたいな家族を作りたいですね」と家族に感謝し、将来への想いを明かすのだった。