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#81111月2日(日) 10:25~放送
パナマ

 今回の配達先はパナマ。ボクサーの浅香佑樹さん(24)へ、大阪府で暮らす父・伸夫さん(52)、母・美佐穂さん(48)の想いを届ける。
 パナマはWBA世界ボクシング協会の本拠地で、数多くの世界チャンピオンを輩出したボクシング大国。佑樹さんはミニマム級という一番軽い階級で、1か月後にプロデビュー戦を控えている。中学生の頃から長年追い求めてきたプロデビューのチャンスが24歳にしてようやく巡って来たのだ。首都パナマシティーの中心部にある、誰でも利用できる巨大なジム「アテイナ・バイロン・トレーニングセンター」で佑樹さんを指導するセルソ・チャベストレーナーは、これまで15人もの世界チャンピオンを育て上げた名伯楽。ひたむきに練習する佑樹さんにチャベスさん自ら声をかけ、指導を買って出たという。二人三脚で練習に励んで3か月。チャベスさんは、やらなければならないことはまだまだあるとはいえ「佑樹には才能がある。世界タイトルマッチに届く素質は十分にある」と話す。
 小学生の頃は野球少年だった佑樹さん。会場で見た井岡一翔選手の試合でボクシングに魅了され、中学1年生で自身も始めると、1年後には全国大会で優勝するまでに。そして単身フィリピンへボクシング留学するなど、早くから本場で経験を積んできた。しかし高校時代は思うように勝てず、より強くなれる環境を求めてボクシング大国パナマへ渡ったのだった。
 現在の住まいは、パナマシティーの郊外。元WBA世界スーパーフライ級チャンピオンであるリボリオ・ソリスさん(43)の自宅に住まわせてもらっている。2人の出会いは7年前、短期留学でパナマにやってきたときにソリスさんからスパーリングしようと誘われたのがきっかけだった。今や家族も同然の仲で、時間があれば一緒にボクシングを観戦し研究する。元世界チャンピオンの考え方を間近で学ぶことができる、佑樹さんにとってはこの上ない環境だ。
 実は佑樹さんは2020年に一度パナマへ移住するも、新型コロナウイルスの影響によりわずか半年で帰国。さらにコロナも明け、改めてパナマへの移住を計画していた時、突然右半身が動かなくなってしまう。医師の診断は原因不明のヘルニア。選手生命の危機に陥り、ボクシングを辞めようかと思い悩んだが、そのとき母・美佐穂さんから言われた「あんたがやりたいんやったら、やりや」という一言でもう一度続けようと決心したという。そして再起をかけてリハビリをスタート。そんなある日、パナマのソリスさんから電話があり、日本で行われる自身の世界戦に招待された。ソリスさんは惜しくも敗戦となるも、リングを降りてきたソリスさんから言われたのが、「次はおまえな」「いつ帰ってくる」。その言葉で「やらなあかんわ」と改めて奮起した佑樹さんは、長く辛いリハビリを乗り越え、1年前にソリスさんとの約束を果たすためパナマへ帰って来たのだった。
 パナマでの生活を気にしていた両親だったが、父・伸夫さんは今の息子を見て「それなりにすごい環境でやってるんやなと。言葉もちゃんとしゃべれて、コーチもああ言ってくれているならちょっとは行けるのかなと思います」、母・美佐穂さんも「日本でやっていた時と変わらない姿が見れたので、ちょっと安心しました」と胸をなでおろす。
 選手生命の危機を経て再起した今、2度目はないという覚悟を持ってプロデビュー戦に挑む佑樹さんへ、家族からの届け物は母が息子を思い手作りしたお守り。さらに母が応援のメッセージを綴った手紙を読んで、佑樹さんは思わず流れた涙をぬぐう。そして両親に「この年になっても夢を追わせてもらって…むしろ『お前、そんなんでチャンピオンになれるのか』とはっぱをかけられていたので、感謝ですね」と想いを伝え、表情を引き締めるのだった。
 いよいよ迎えたプロデビュー戦当日。相手はすでにプロとして1勝をあげているパナマ出身の選手で、試合は序盤から激しいパンチの応酬となる。相手は身長もリーチも上回るが、持ち前のスピードで確実にパンチを当てていく佑樹さん。果たしてその結果は…。