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#80810月12日(日) 10:25~放送
ハワイ・ラナイ島

 今回の配達先はハワイ。ここで猫の保護活動をしている優・バトオンさん(39)へ、沖縄県で暮らす父・忍さん(69)、母・日登美さん(63)の想いを届ける。
 島の大部分に手つかずの自然が残ることから“最後の楽園”と呼ばれるラナイ島は、ハワイ諸島で一番小さい有人島。信号もない島の中心部から車で15分の場所に、優さんが唯一の日本人として働く猫の保護施設「ラナイ・キャットサンクチュアリ」がある。2009年に誕生した施設は2300平方メートルもの敷地があり、780匹の保護猫が暮らしている。一般的な保護施設は猫が室内のケージにいるイメージだが、キャットサンクチュアリは広大な敷地を6つのエリアに分けて放し飼いに。人慣れした猫、年老いた猫など、同じ境遇の猫をエリアごとに分けることで、猫にとってストレスのない環境を作っている。実は島一番の観光施設でもあり、わざわざアメリカ本土から訪れる人も多いという。また施設で気に入った猫がいれば里親になることも可能で、1週間で平均8匹ほど、これまでに約1000匹が引き取られていった。優さんは昨年、この施設のマネージャーに就任し、チームリーダーとして16人のスタッフをまとめている。
 8年前、ラナイ島出身の夫・タッドさんと結婚した優さん。移住し、この島にキャットサンクチュアリがあることを知った。ラナイ島にはハワイシロハラミズナギドリという1年でたった1つしか卵を産まないハワイ固有の鳥が生息しているが、野生の猫が希少な卵を襲って食べてしまうため、絶滅の恐れがあると社会問題になっていた。そのため野猫は殺処分されていた中、鳥も猫も保護するために生まれたのがキャットサンクチュアリ。「ただの保護施設だったら働きたいとは思わなかった。でも鳥と猫、両方を守れるユニークなプログラムだと知って」という優さん自身、小学3年生で初めて猫を保護したのを皮切りに、高校卒業までに猫8匹、犬4匹を保護して育てた経験が。ハワイ大学では環境学を履修し、6年間自然と人間の関わりについて学んだ。実は父・忍さんも沖縄固有の鳥・ヤンバルクイナの保護活動に長年尽力してきたといい、動物好き、自然好きは父親の血筋だと語る。
 現在は共働きで、3歳と10か月の子どもを抱え家事と育児に日々奮闘している。そんな優さんがラナイ島で一番気に入っているのが、沖縄の雰囲気に近い海辺の場所。訪れるたびに沖縄の家族のことを思い出すといい、「ここにいると定期的に様子も見に行けない。結婚して離れてみて、もうちょっと家族との時間を作っておくべきだったなあと思います」と胸の内を明かす。
 父の忍さんは、娘の活動を見て「野生生物も猫たちも両方を守る施設で働いているというのは、私としては“愉快”ですね。素晴らしいところで働いているなと思って見直しました」と喜ぶ。一方、母・日登美さんは仕事と育児について少し心配しているようで、「パワーのある子なので一生懸命両方やってるんだと思うんですけど、母親としては疲れて休みたいときに行ってあげられないのが残念だなと思います」と話す。
 ある日は里親が決まった猫を飛行機に乗せるため、車で空港へ。今回の里親は、アメリカ本土のニューオーリンズ在住だという。里親になった人たちはその後の猫の様子を写真や動画で知らせてくれるそうで「幸せそうなのを見ると、譲渡できてよかったなと思います」と優さん。この日も「頑張って」と猫を送り出した。
 ラナイ島に渡り8年。しっかりとこの地に根を下ろし、保護猫の世話と子育てを両立する娘へ、両親からの届け物は優さんが幼い頃、父と母に何度も読んでもらった思い出の絵本。それは偶然にも動物の物語だった。さらに、初めて拾った子猫を育てたときの哺乳瓶も届けられ、優さんは「私の原点ですね」と目を細める。また、母からの手紙には子育てについて綴られていて、育児中の自分とも共通する思い出話に思わず涙ぐんだ優さんは「ありがとうございます。こういう話はあまりしないので…」と両親の想いに改めて感謝するのだった。