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#7946月22日(日) 10:25~放送
メキシコ

 今回の配達先は、メキシコ。プロボクサーの中井麻美さん(30)へ、大阪府で暮らす父・時男さん(61)、母・浩美さん(61)の想いを届ける。メキシコに渡った娘について、「結局、ダメだと言っても聞く人じゃないので」と時男さん。浩美さんも「治安や食事の面など不安で心配で仕方がなかったんですけど、もう応援するしかないと思って見守ってる状態です」と今の心境を明かす。
 首都メキシコシティは、WBC世界ボクシング評議会が本部を構えるボクシングの聖地。麻美さんはここでジムに所属しないフリーの選手として、トレーナーのビクトルさん(49)と二人三脚で活動している。麻美さんは身長169センチの恵まれた体格と、KO自体が珍しい女子ボクシングにおいてKO率80%を誇るパワーを武器に、日本女子バンタム級とWBO女子アジア太平洋バンタム級の2つのタイトルを獲得。しかしそれでは満足できず、世界一を目指してあえてタイトルを返上し、2024年、グローブだけを持って海を渡った。まるで道場破りのようにさまざまなジムを訪ね、スパーリングを重ねる中、声を掛けてきたのがビクトルさん。「ただ、一番強い存在になりたい」そんな思いだけでメキシコに来た麻美さんを生活面も含めて支え、居候先も彼の妹の家。ビクトルさんの姉も実の娘のようにかわいがってくれている。
 高校生の時、たまたま見かけた日本拳法に興味を持ち、体験入門した麻美さん。戦うことに目覚め、23歳で総合格闘技の道へ。26歳でプロボクシングに転向すると才能を開花させ、わずか1年でアジア王者となった。
 ある日は、ビクトルさんが探してきた元世界王者とスパーリングを行うが、麻美さんはまったく引けを取らない。世界のトップレベルと練習できるのも、本場にいる利点の1つだ。しかし、実は麻美さんは強いボクサーとして現地でも知られる存在になってきたことで相手から敬遠されるようになり、この1年で試合ができたのは1回だけ。唯一の試合でもKO勝ちし、世界ランキング5位になったことで、いっそう敬遠されるようになったという。そのため、メキシコへ来て得たファイトマネーは、わずか1試合分。今は貯金を切り崩して生活している。しかもトレーナーのギャラはファイトマネーから支払われるので、試合がなければビクトルさんの取り分もない。ビクトルさんは電気工をして生計を立て、麻美さんが世界チャンピオンになる夢を共に追いかけてくれているが…。
 試合がしたくてもできず、心は疲弊し、貯金にも限界がある。そんな中、うれしい知らせが舞い込んできた。業界でも有力なプロモーターとつながることができたのだ。車で3時間、隣街のプエブラにやってきた麻美さんはプロモーターと面会。彼らからはチャンピオンになるため、一から出直して最低3試合はすること、そしてこの街に引っ越すことを条件として、次のステージへ上がることを約束してくれた。「すごく良い話だし、良い機会も与えてもらえると思うので、ここで試合したい気持ちはすごくある。でも同時に、今お世話になっているトレーナーと離れなければならないとなると、ちょっと難しいところですね。だけど正直、彼らと一緒にボクシングのキャリアを進めたい気持ちはあります」。複雑な心境の麻美さんは、ビクトルさんに大手プロモーターから誘われたことを報告する。ビクトルさんからは「君の夢が叶うんだよ。君が思うようにすればいいと思うよ」という返事が…。
 自らの力を信じて前へ進み続ける娘へ、両親からの届け物は、高校2年生まで続いた家族の交換日記。さらに最後の新しいページには、日記の“復活”として、母・浩美さんが麻美さんに宛てた手紙が綴られていた。懐かしそうに日記を読んでいた麻美さんも、「家族はいつでも味方です」という母の言葉に、自然と涙がこぼれる。だが、「こんな風に思ってくれている家族がいると思ったら、まだまだここで頑張れますね」と再び笑顔を見せたのだった。
 そしてまた、日本の両親の元へ道を決めた麻美さんからの交換日記が戻ってきた。それを読んだ浩美さんも「麻美らしい選択をしました」という、本場で世界最強を目指す娘が下した決断とは…。