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#6443月20日(日) 10:25~放送
東京・青梅市

 今回の配達先は、東京都青梅市。刀鍛冶工房の村下(むらげ)として奮闘する平田のどかさん(23)へ、岡山県で暮らす父・輝久さん(46)の想いを届ける。
 「村下」とは、刀の原料となる玉鋼(たまはがね)を作る職人のこと。のどかさんは夫で刀鍛冶の祐介さん(34)とともに豊かな自然が広がる青梅市に工房「平田鍛刀場」を構え、伝統的な日本刀のほか、包丁やナイフなどを製作している。およそ1200度に熱した玉鋼を折り返しては、打ち延ばす。この「折り返し鍛錬」という作業を繰り返す事で鉄の層が重なり、強靭かつ折れにくい刀になるという。表面には、折り返し鍛練によって生じた「刃文(はもん)」や「地鉄(じがね)」と呼ばれる日本刀独特の白い波のような模様が浮かぶ。これが職人の技術の高さ、原料の良さの証でもある。特に、戦国時代からの刀鍛冶の本場である岡山県で修行した祐介さんが作る包丁は、切れ味の良さと丈夫さからプロの料理人や刀の愛好家に支持され、現在半年待ちの人気だ。そんな祐介さんの職人技に必要不可欠なのが、村下というのどかさんの仕事。実は刀鍛冶よりも希少な職業で、のどかさんは日本でただ1人の女性の村下なのだ。「たたら炉」と呼ばれる装置に、燃えた木炭と砂鉄を交互に入れて化学反応を起こし、刀作りに適した鉄を生み出す製鉄の責任者。のどかさんは五感を研ぎ澄ませ、炎の色や炉の音を見極めながら炭と砂鉄の量、入れるタイミングを計る。作業開始から8時間、ようやく玉鋼が完成。通常、砂鉄30キロから約7~8キロの玉鋼ができるが、この日は約12キロもとれたうえ質も良く、夫婦からは笑顔がこぼれる
 独身時代にたまたま友人に誘われて見学した岡山の工房で祐介さんと出会い、初めて刀鍛冶を知ったのどかさん。3年前、祐介さんの独立を期に、夫を助けるため村下を始めた。それまでは高校を中退し、コンパニオンや飲食店など職を転々としてきた。飽き性だというが、今は「刀って奥が深すぎて、一体あと何年やればいいんだろうっていうぐらい幅広いから、飽きないし面白い」と、仕事に魅了されている。工房から帰宅すると、3児の母として一息つく間もなく夕食の支度に取り掛かる。忙しくても家では家族との幸せな時間を過ごすが、自身が子どもの頃は両親が離婚し、仕事で多忙な父とはすれ違いの日々が続いた。その寂しさから生活も心も荒れ、思春期に入るとさらに反抗がエスカレート。父との衝突が絶えなかったと振り返る。
 一方、のどかさんが東京に行ってからは、コロナ禍もありずっと会えていないという父・輝久さん。まだ青梅の工房も見たことがなく、危険な仕事との認識はあるもののどういう作業をしているのかもわからないという。だが、娘の働く姿を見て「岡山にいた時と様子が全然違う」と驚き、そして「昔は『大丈夫かな』と思っていたのが正直なところですが、本当に好きでやってるんだなというのがわかりました」と納得の表情でうなずく。
 反抗を繰り返した日々を乗り越え、「生まれ変わっても村下をやりたい」というほどの天職に出会い奮闘する娘へ、父からの届け物はのどかさんが反抗期の頃に親子で使っていた連絡帳。そこには「お父さんへの用事は電話か連絡帳に書く事」「家には帰りなさい」など、親子関係を模索していた父の言葉の数々が残っていた。添えられた手紙には、「のどかとともに過ごした楽しい苦労は、今もお父さんの宝物です。のどかにもそんな宝物ができるように祈ってます」と綴られ、のどかさんは父からのエールに涙があふれるのだった。